チビデカちゃんのDOUTEI喪失日記

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” 僕を 買ってください ”



いきなり目に飛び込んできた大きな文字と絡み合う男女。途端に脇汗が吹き出し、俺は即座に画面を閉じた。

周りをキョロキョロと見回したが、弁当を食べながらパソコンを見ている同僚。外に飯を食いに行ったのだろうか？課長は席にいなかった。誰も俺を見ていない……助かった。


保健体育の授業しか知らない俺にとっては刺激が強すぎる！


こんな刺激が強い映画を見て、俺のオレが暴走しないか？それだけが心配だった。だが、何事も体験してみなければ始まらない。未知の秘境が俺を待っているんだ。

ヤバい腰の動きを勉強したい。

よしっ！今夜、人生初のＲ指定を観に行くことにしよう！






調べると、新宿の歌舞伎町近くのＨＯＴＯシネマズでやっているらしい。ついでに不良少年少女でも補導するか。俺は一度家に帰り、マスクとサングラスを持って家を出た。





――２２時


映画館に到着し、俺は万が一を考えてマスクとサングラスを装着した。これなら俺が誰かなんて分かるはずはない。少々怪しいが、顔を見られるよりはいい。






「座席のご希望はありますか？」


愛想のない受付の男が見せてくれた座席表は、既に半分くらいが埋まっていた。

まずいな……レイトショーなのにこんなに混んでいるのか……松坂梅李という俳優は、どうやら人気があるらしい。

幸い、一番後ろの端が空いていた。



「ここで頼む」

「わかりました」


そうだ、身分証明書を出さなければならない。
初めてのＲ指定の映画に脇汗が噴き出す。やばい、落ち着くんだ。



「あの……これは？」

「身分証明書だ」

「あの……」


「あっ！失礼した！」


まずいっ、勢い余って警察手帳を出してしまった。耳までカァっと熱くなるももう遅い。警察官がえろい映画のレイトショーに一人で来ていることがバレてしまったじゃないか。ついでに童貞もバレたかっ！？

いや、慌てるな……童貞がバレるはずはないだろ。ここは何事もなかったようにするしかない。


「失礼、こっちだ」


俺は、努めて冷静に免許証を見せた。


「何ですか？」

「何ですかって、免許証だ。見ればわかるだろう」

「いや、わかりますけど……必要ありませんよ」



「……え？」


なにっ、必要ない？



「それは、どういう事だ」

「どういう事って……要らないです」

「まさか、チェックをしてないのか？」

「はぁ……」



わけがわからないという表情で、そいつは俺を見つめた。

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