【学パロ】君に胸キュン２【詰め合わせ】(J.M) (ページ42)

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「お兄ちゃん、静岡のおばちゃんから暑中見舞来てる」
「おー、おばちゃん毎年くれるんだよなぁ。返事しないとな。今年はAも書くか」
「うん、そうする」

お兄ちゃんと話して、初めて知ったことはいくつもあった。
その一つがこの『静岡のおばちゃん』の存在だ。

お父さんの従姉妹にあたる人で、お兄ちゃんが言うところの親戚のなかで唯一信頼できる人。
お父さんたちが亡くなった直後から一年くらい、お兄ちゃんはとてもお世話になっていたと言う。
今は季節の便りとたまに電話をすると教えてくれた。
くそみたいな親戚のなかで唯一まともな人だよと、いたずらっ子な顔をしてお兄ちゃんは笑ってた。その笑顔だけで、お兄ちゃんがこの静岡のおばちゃんのことをほんとうに信頼してるのが解った。

電話を掛けたら、静岡のおばちゃんはとっても喜んでくれた。
私の話もうんうんと嬉しそうに聞いてくれて、進路も頑張ってねと応援してくれた。
声だけで、人柄の良さが滲み出てるんだなって初めて思った。

そんな人があの親戚の中に居たんだと思うだけで心が軽くなった。
信頼できる大人が多いのはいいことなんだなって腑に落ちた。

夏休みの間、私は平日は図書館に通っていた。
実際集中できるし、探し物も見つかるし、息抜きに読みたい本もある。
私が図書館にいる間は、お兄ちゃんはアトリエにこもったり、船をチャーターして釣りに行ったりしているらしく、日々日焼けしていく。
最近はあまりに黒いので「ちょっとやだ」と言ったらあからさまに落ち込んでいた。
でも黒すぎだと思うの。夜道で出会ったら腰抜かす自信があるよ。
変質者になっちゃうよお兄ちゃん。

私とマツジュンさんは相変わらずだ。
約束通りお付き合いはしていない。だけど平日の夕方や週末になるとケーキをもって遊びに来てくれる。
最近は私がチーズケーキ以外も欲しがるから、フルーツタルトやチョコレートケーキの出番が増えた。たまにゼリーが入ってると私とお兄ちゃんで取り合うのを呆れて見てる。

その優しい視線が私に向いていることが嬉しくて胸がぎゅって苦しくなる。
恋を知らなかったわけじゃないけど、これが本当の恋なんだって思ってる。

Aちゃんって呼ぶ声が好き。
オールバックも好きだけど、無造作に降りた前髪はマツジュンさんのキレイな顔を可愛くするからそれも好き。
お兄ちゃんに言われた通り節度ある関係だけど、きっと私からは好きが溢れてると思うんだ。