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動けないまま固まっている私をよそに、玄関から三人分の足音がドタバタとやってくる。
いくらゆっくり寝てたからって五人が下に居て遊んで、出かけて、っていう騒音に気づいていなかった自分の寝汚さに驚きつつも、どうしようって慌てる。
だけど、どこかに行く間もなくリビングの扉が開いてしまった。
「うあー、外あっちぃ！！‥あれ、起きた？おそよう」
「あ、おそ、よう」
一番最初に入ってきたのは翔だった。人懐っこい丸い顔に汗を浮かべて、あっちいあっちい言いながら冷蔵庫から麦茶を出している。
「Aちゃんおはよー！お邪魔しまーす！風邪大丈夫？」
「もう平気。明日から学校行くよ」
そう言ってきらっきらのスマイルを向けてくれたのは相葉くん。手に持ったパピコがぐんにゃりしてる。とけてんだな、あれ。
そして、最後に。
「お邪魔します。A、お前寝てなくて平気なの？」
「‥‥うん」
コンビニのビニール袋を手に持って、額に汗を浮かべて「翔さん俺も麦茶ちょうだい」って言ってる潤。
ほんの四日かそこらぶりなのに、めちゃくちゃ会ってなかったような気がして、その横顔に目が釘付けになってしまった。
「なんか久しぶりだな、ちょっとやつれたんじゃね？」
「風邪ひきダイエットかも」
「ちゃんと食えよ」
「うん」
「ああ、アイス食う？ソーダーバーだけど、半分こする？」
「いいの！？やった！！‥‥あ、でも」
水色のソーダバーは真ん中で二つに割れるタイプで、袋から出すとがりがりくんみたいなのに木の棒が二本刺さってて見た目がちょっと面白い。
それを差し出されて、喜んだあと、ちょっと戸惑う。
こういうのって、もうやらない方が良いんだよねって。
だって潤に好きな人いるって知っちゃったもん。
知っちゃったら、なんだか悪いような気がしてきちゃう。
それに期待したくない。
お菓子もジュースもなんだって分け合ってたら、それが普通になっちゃって、いつか潤が彼女とそんなことするようになった時にきっと私は離れられなくなってると思うから。
だから、今のうちからやめておこう。
「やっぱ、いいや」
「え、Aこれ好きじゃん」
「ん、でもいいよ」
「‥まだ本調子じゃねぇの？」
心配を張り付けた潤の表情。俯いた私を下から覗き込む、ちょっと眉を寄せた優しい顔、声。
胸が一気にいっぱいになって苦しくって痛い。
潤のことが好きで、苦しい。
そんな私の耳に届いた翔の爆弾発言。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
