ましら、月を愛す(2/20up) ページ10
2011年3月。
未曽有の大災害が起きて、俺は、俺らの立場を痛感した。
今はまだその時じゃないと自分に言い聞かせて、出来ることを水面下で模索し続けた、まさに暗中模索の日々。
東京に居ても日々続く揺れ、感覚がおかしくなりそうな報道、褪せていく日常を繋ぎ止めるために欠かさなかったルーティンワーク。
誰もが広義での被災者のような閉塞感。
いつでも傍に居たメンバーに、変わらない表情、会話にどれだけ救われたか。
そんな日々の中で、正直恋愛とか、そう言ったものを完全にそぎ落としていたのだけれど。
ふと翔さんが漏らした言葉で、思いがけずAちゃんとの関係を再認識させられたことがあった。
「そう言えばさぁ、Aが」
「A‥、ああAちゃん？ え、なんかあった？」
「いや真琴から聞いたんだけど、めっちゃくちゃ忙しいらしい」
収録の合間、時間が長く出来たから何となく他の仕事の打ち合わせをしていたから、脈絡ないその言葉に俺は一瞬きょとんとした。
「Aちゃん、そう言えば震災大丈夫だったのかな」
相葉さんが話に加わった。
ニノもリーダーも神妙な顔をして頷いている。
「それは大丈夫だったみたい。丁度職場に居て、大変なのはどこも同じらしいけど‥ほらアイツ外務省じゃん」
「外務省！？」
「えっ、何すっごいエリートなの！？」
「あれ、言ってなかった？」
翔さんが俺らの勢いに半笑いになる。何で笑うんだよ。
「お堅い職業とは言ってたけど‥外交官とか？」
「うんにゃ、本人は裏方だって言ってる。まぁ海外出張もわりとあるみたいだし、今は各国との色んな処理に追われて書類がてんこ盛りでほぼ週末しか家に帰れないみたいで」
思わず、と言った感じでニノとリーダーが及び腰になる。
「うわぁ‥‥」
「げ‥」
相葉さんも「マジで、俺耐えらんないそんなの」と呟いた。
「俺らの知らないところで苦労してんだなって思って。何か真琴が週末様子見に行ったんだって。そしたらAとしてはあり得ない程部屋が散らかってて、話しながらもう寝ちゃってたって」
「なにそれ超疲れてんじゃん、Aちゃんそんなの一言も――」
言いかけて、ハッとする。
そうだ俺彼女の連絡先知らないんだった。
教えてくれないんだよな、鉄壁すぎて。
こんな時、大丈夫？ の一言もかけられない。
非日常を纏おうとする日々に忙殺されていたのは事実だけど。
でも。
耳にしたら途端に身近に感じるから。
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お塩(プロフ) - カナンさん» カナンさん、コメントありがとうございます！俺担シリーズ、好きと言っていただけて超嬉しいですありがとうございます！！私も過去編好きで脳内では話が進んでるんですけどね‥‥頑張ります！！ (2022年10月20日 22時) (
レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
カナン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！俺担、何度もリピートするくらい大好きです。ぜひ過去編の方も続きが読みたいです！ (2022年10月15日 19時) (レス) id: f73a672905 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2022年2月3日 6時
