＊ ページ31
「潤、潤あの、違うの」
「違うって何が。今の話も、その前も聞いてた。解ってると思うけど、お前とはこれっきりだから。連絡先全部消しとけよ。今後俺に関わるようならそれこそ、解ってるよな？」
目の前に座り込んで視線を合わせて、かみ砕くようにゆっくりと告げる。
あんなに可愛いって思ってた顔が、全然そう思えなくて。
とんだ修羅場に浮上したこの世界で生きるための自分の酷薄さに、それこそうんざりする。
「チカ、今の話詳しく聞かせてもらうよ。他の皆も。ただし一切口外しないように」
「‥‥違うの、違うの、だってもうそんなのしてない」
「今はして無くても過去にしてたならダメだって解ってるだろ、ほら立って。行くよ‥‥松本さん申し訳ありません！ 高山のことはこちらで厳正に対処します」
「‥‥頼みます。チカ、お前しっかりしろよ」
「潤‥‥‥ごめんなさい」
頭を下げたチカが泣きながら促されるままに去って行って、他のモデル仲間も気まずい空気のまま挨拶をして帰っていく。
気付いたら思いっきり拳を握りしめていたようで、ようやく肩の力も腕の力も抜けて、体中にゆっくりと血が巡りだす。
同じ場所に立ち尽くしたままだったAさんが一歩近づいて、深々頭を下げた。
「‥‥松本さん、すみませんでした」
「え、なんでAさんが謝るの」
「こんな騒ぎにしてしまって‥それに、チカのこと知っていてしっかりお話しなかったので」
「ああ‥‥や、でもきっとあの日にこの話されても俺信じなかったと思うし」
あの夜。
雨の匂いと一緒に現れた彼女が、こんな醜聞を聞かせたとしても俺は反発しただろう。
物事には状況や順序ってもんがあって、タイミングだって大事だ。
こんな形になったけど、それだって仕方ないことだって解る。
チカのことはあっちの会社に任せて、一応俺も上に報告はしておくけど、あっちの社長とうちの社長がわりと仲良しだからなんとかなるとは思えた。
「Aさんさ、」
「はい」
「今夜暇？」
「暇、ですが」
「メシ行こうよ。お礼もしたいし」
「いえ、そんな」
無表情だった瞳が丸くなって、頬が朱に染まる。
その反応が堪らなく可愛くて。
ああもうほら可愛いって思っちゃってる俺がいて、口角が持ち上がる。
「お礼だけじゃなくて、俺がAさんとメシ食いたいし話したいの」
「でも、」
「もっと知りたい、Aのこと？ いいだろ？」
じっと見つめれば、唇を噛み締めて彼女はコクリと頷いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 301人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お塩(プロフ) - トリコさん» トリコさん、きゅんきゅん確定でしたか？やった！おＪさんはこの後関係を深めていく間にきゅんきゅんどころかぎゅんぎゅんさせられまくります(笑)たまにはこんな世界もいいですよね、コメントありがとうございます！！ (2022年3月9日 14時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
トリコ(プロフ) - モデルちゃんのその後？中話？もすでにキュンキュン確定なお話じゃないですかー！ (2022年3月9日 10時) (レス) @page33 id: 412b010b6a (このIDを非表示/違反報告)
いみちぇん＆嵐大好きみよら(プロフ) - お塩さん» なるほど！理解しました！はいっ、待っておきますね♪チャットになっちゃったのでこの辺で失礼します！ (2021年12月27日 23時) (レス) id: 65097701c5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いみちぇん＆嵐大好きみよらさん» 『世界は二人の〜』の掲載作品数が大幅に減ってしまい、2が空っぽになってしまった、という話なんです。どちらにしろ、今後短編が増えて行けばそのうち2も公開になりますので、気長にお待ち下さい。 (2021年12月27日 20時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いみちぇん＆嵐大好きみよらさん» 名前変換ミス教えてくださってありがとうございます！おいおい直していきますすみません。あと分かりづらくてすみません、『合鍵な関係』というシリーズが元々短編で『世界は二人の〜』に掲載されてたんです。で、合鍵シリーズが増えたので独立させた結果、→ (2021年12月27日 20時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年10月10日 1時
