これからも ページ27
何を言っているんだろう私は。だんだん意味が解らなくなってきた。
Aは混乱したままの脳みそで松本を見つめる。
対する松本はぽかんとした顔のままAを見つめて、それから困ったような顔でやけに格好良く笑った。
「っ」
イケメンすぎる笑顔を真正面から被弾して、Aは胸が苦しくなる。
「Aさん、ありがとう。俺もAさんが良いよって言ってくれるならこれからもこうして過ごしたり、またご飯も行きたいし、たまに遊びたい」
「うっ、うんうん」
(あれ？でもそれって)
松本の素直な言葉に同意しながら、Aは、はたと思う。
(私今とんでもないことに頷いたのでは？)
顔を上げれば松本はすっかりいつも通りに戻っていて「そろそろ帰るわ、安心した」なんてのたまっている。
「や、ちょっと待って松本さん」
すでに玄関に向かっている背中を追いかける。
「なに」
「もしかして、待ってもしかしてまた来るつもり？」
「‥‥。Aさんちなんか居心地いいんだよね、俺用のコップとか色々今度持ってきて良い？」
「ちょっ、ちょっちょっ、ちょっと待ってそれは許されるの！？ 変な噂になるよ！？ 夜でも帽子被った不審者が出ますってなるよ！？」
「何の話だよそれ。まぁ次からはちゃんと連絡する」
「それは助かる。っていやいや。だから、松本さんの恋人さん的にアウトなんじゃって話は」
「まぁそれはおいおい。とにかく明日早いから今度ね。Aさん怒ってなくて良かった〜。コーヒーご馳走様」
「あ、こちらこそご飯ご馳走様です」
松本が頭を下げるからAもついつられてお辞儀をしてしまう。その頭上から「ほんと面白いよねAさんって」と聴こえてくるから、やられた！ と思う。
しかし、Aが顔を上げた時には、松本はもう帽子を被って玄関のドアノブを掴んでいた。
「おやすみAさん、また連絡するよ、じゃ」
「お、やすみなさい」
松本の肩越しに見えた外はもう雨が上がっている。
ぬるい夜風が入り込んで、だいぶ乾いてきたAの髪を揺らす。
松本が楽しそうに笑う。その背後に遠くのビル群が光って、まるで切り取られたワンシーンのようだ。
「あ、そうだ。Aさん恋人以外は名前呼びしないって言ってたじゃん。でも俺さん付け嫌だから、いっそ呼び捨てか他の呼び方考えといて。さん付けしたら罰ゲームね」
「はっ！？ えっ、あ、ちょっと――」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
