春まだ遠い夜 ページ5
大きな挫折は二回。
一度目は17歳の時。
二度目は28歳の時。
もう大それた夢は見ない。
もう恋はしたくない。
感情を揺らすものは要らない。
なんにも要らないのに。
只今ちょうど日付を跨いだところ。
花金、とは言え時刻はすでに土曜日だが、飲み屋街はまだまだ賑わいを見せている。
大都会東京のど真ん中、23区の一角を足早に歩く女性の足元には、初春を思わせるピンクベージュのヒールの低いパンプス。一目ぼれで即買いしたお気に入りの出番が、まさか二日も会社に泊まり込む地獄巡りにかち合うとは思っていなかった。
色々な社内規定があるから、宿泊、は出来なかったけれど、近くの銭湯に同僚数人とわいわい行く羽目になるとは思わなかった。
それはそれで修学旅行のような楽しさもあったけれど、それにしたって。
「ほんっともうやだ早く帰りたい」
地獄の底から絞り出すような声音。
今まさにようやく帰宅の途にありながらそんな言葉が零れ落ちるくらい、もう帰りたくて帰りたい。お家じゃないんだ、お布団に帰りたい。なんだって丸々二日も会社にいなけりゃならんのだ。働き方改革はどうした。
周囲の楽しそうな喧騒がさらにそんな気持ちを強める気さえして、彼女はストールに顎を埋めた。
「ううう、眠い‥‥」
この角を曲がってそこのコンビニでお茶でも買ってそれからお菓子と明日の朝ご飯になりそうなものと何か楽しそうな雑誌と‥なんて彼女は考えていた。
「‥‥っとお！？」
彼女の足が何かに躓いた。
何とか転ばずに踏ん張れたのは、このお気に入りのパンプスを汚したくなかったからだ。
「なに、ゴミ――」
足元に目をやれば、そこには結構高級そうなスニーカーが見えた。大きさから言って男性。
「‥‥え、した、死体？」
そのまま視線を動かせば、ビルとビルの間の細く暗い路地にスニーカーの本体になるであろう、足、それから身体が見えた。
「ひっ‥！！ ‥‥えええ、どうしよう」
瞬間、めんどくせぇ！ と彼女は思った。
関わりたくない。
多分酔っ払いが寝こけているんだ。そうだそうだ。いやもしかしたらここがお家なのかもしれない。帰宅してるんだ。そうだそうだ。
そんなわけあるか。
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お塩(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃんさん、コメントありがとうございます！えっ、ヒーちゃんさんも夢落ち潤担さんですか！？そんな偶然があるとは驚き過ぎて笑ってます。続きは実はできてるので、修正しつつそのうちページ作りますね！ゆっくりお待ちください！ (2021年9月22日 15時) (
レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
ひーちゃん(プロフ) - お塩さま、作品を楽しく拝見させて頂いております。夢堕ち潤担！私もです( ・∀・)ﾉ﹛ﾊｰｲ!何だか嬉しく思いました。続きも心待にしております。 (2021年9月22日 2時) (レス) @page28 id: af081d03e4 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさんありがとうございますっ！私の中ではむしろ一番古い話なので不思議な気分です(笑)創作意欲ばっかり溢れて実際は空回りですよ‥‥ふへへ。いつもゆぃさんに励まされてます！ほんとにありがとうございますー！！ (2021年9月1日 12時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - - ここにきてまさかの新作とは！驚きです！！お塩さんの書きたい意欲が凄い♪無理しないでくださいね~ (2021年8月30日 14時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月7日 1時
