＊ ページ4
「‥‥はぁ‥」
「やべぇ、チョーきもちい‥」
「ん‥‥」
気が付けばソファに向かい合って座ったまま抱き合って、潤の肩に顔を乗せたAが力なく身体を預けている。
ぎゅうっと抱きしめて、それ以上言葉もなく、二人はお互いの体温と逸る鼓動を分かち合った。
「‥‥A、その、あのさ」
「うん？」
ぐったりした声が返ってくるから、刺激が強すぎたのかと少し心配になる。
高校二年生だというのに、お互い初めての彼氏彼女で、やることなすこと言うこと全てが初めてだから、こういう時どう声を掛けるのが正しいのか潤にはよく解らない。
そもそも女心がよく解らない。
でも、今自分が気持ちが良くて嬉しくて幸せなように、きっとAも同じ気持ちでいてくれると思えた。
だから、勇気を出す。
「‥夏祭りの日、あの‥」
「うん‥一緒に、行くんでしょ？」
「お、おう！ ‥んで、その、終わったらウチ来ねぇ？」
「潤の？ うん、良いよ？」
解って無さそうな返答に、もうちょっとはっきり言わないといけないなと腹を決める。
男は度胸だ。当たって砕けたって、きっとその破片を彼女は優しく拾い集めてくれるから。
「‥‥親、いねぇから‥‥」
「うん、うん‥‥え？」
「だから、祭りの夜、家、だ、誰も居ねぇから、その‥‥」
両肩を抱いて真正面から見つめ合う。
お互いに熱くて真っ赤になっているのが解る。目視できるし、自分で嫌って言うほどに解る。
「俺の誕生日、ずっと一緒に居てくんねぇ？ そんで、その‥‥」
「っ、潤」
「Aが、ほ、ほしいっ」
「っ！！ ‥‥‥‥う、ん‥‥私も、潤が、ほ、ほしぃっきゃ！？」
「Aっ、も、めっちゃ好きだ！」
「わっ、私も！！」
ぎゅうううっと抱き合って、なんだかよく解らないけどお互いに感動と興奮で好きを繰り返す。
たった今恥ずかしくも、潤の誕生日に二人で一緒に大人の階段上りましょう的な約束をしてしまったのだ。
「やべぇ！ 俺らチョー恥ずかしい！」
「あはっ、でも‥楽しみ‥」
「っ、お、おう！」
「あはは、何言ってんだろうね、あは、あはは！」
「ふは、はははははっ！」
「あは‥‥」
「‥‥‥」
遅れてやってきた凄まじい羞恥に収集が付かなくなった二人がついに言葉をなくした頃、リビング前の廊下の扉に体育座りした兄の翔が遠くを見つめて
「マジこいつらなんなの」
と呟いたのだった。
―――――
潤君お誕生日おめでとう！！
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月7日 0時
