元鬼狩りと刀 参

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『この布団に。』

蜻｢はい。｣


蜻蛉切が、手入れ部屋に敷かれた布団に長曽祢を下ろす。


『ありがとう、蜻蛉切。』

蜻｢いえ。｣

こ｢毒ですか。毒が入った傷口は．．．跡形もないですね．．．｣

『毒はどうしたらいいか分かるか？』


手入れ部屋に居る妖精らも、対処法は分からない様子。


『そうか．．．少し借りるよ。』


長曽祢の本体を手に取り、抜刀する。


こ｢異変なし、ですね。｣

『どうしたことか．．．』


まだ怒りも痣も収まっていない。


蜻｢彼奴の話が本当ならば、命の危険はないはず．．．様子見でしょうか．．．｣

『癪だがそうなるな。
蜻蛉切、悪いけど、今日の宴はなしだと光忠に伝えておくれ。日を改めよう。』

蜻｢は。伝えて参ります。｣

『頼む。その後はもう休んでいていいから。』

蜻｢分かりました。｣


蜻蛉切が部屋を出て行く。

こんのすけもいなくなる。


『．．．』


長曽祢の息は荒く、汗もかいていた。

顔色も悪い。

手入れ妖精らが、手ぬぐいと桶に入った冷水を持ってくる。


『あぁ、そうだね。ありがとう。』


それをAの横に置いて姿を消す。

Aは手ぬぐいを冷水につけ、絞って長曽祢の額に置いた。


『(あー、クソっ！童磨の野郎．．．！！
．．．いけない。怒りを納めなければ。痣も出てんなこれ．．．痣は寿命を食う。早くおさめないと．．．)』


長曽祢は完全に気を失っている訳ではなく、上手く体は動かせないものの、ぼんやりとなんとか気を保っている。


『(怒りを納めろ、未熟者。)』(ﾌｳｳｳｳｳｳ


目を閉じ、無理やり落ち着こうとする。


『(揺らぐのは良くない。凪げ。)』(ﾌｳｩｩｩ

長｢(．．．．．．！いけない．．．やめてくれ．．．)｣

『(奴は今目の前に居ない。落ち着け。)』(ﾌｩｩｩ

長｢(やめてくれ、主．．．頼む．．．)｣


痣が引く。


『(だんだん治まってきた。あと少し。落ち着け。今は違う。)』(ｽｩｳｳ

長｢(ダメだ、主．．．！
勇も言っていた。どのような感情であれ、それが大きければ大きいほど、無理やり飲み込むのは、抑え込むのは身体にも精神にも悪いと．．．！！)｣

『(大丈夫、もう大丈夫。)』(ﾌｩｩｩ

長｢(もう良いんだ、無理に収めなくて．．．！
主の怒りは俺達の怒り．．．主の仇は俺達の仇なんだ。だから．．．！)｣


Aが落ち着く。


長｢あ、るじ．．．｣

『！大丈夫、ここにいる。』


弱々しく伸ばされた大きな手に、冷たく小さな手が重ねられた。

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