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「……違うの」
グラスを置いた彼女は彼に向き直った
「私、若狭のこと…まだまだ知らないことがたくさんあるなって思ったの」
自分とは住む世界が違うので心のどこかで彼を遠い存在に感じていた
「全部を知りたい訳じゃないけど…やっぱり気になるの」
交際している上で彼の過去のことが気がかりだった
「興味を持たれるのは好感だが…知らなくてもいい事もある」
彼はあまり自分から過去の話や積極的に自分の話題を語るタイプではなかった
「だからと言って、けっして隠し事をしてるわけじゃない」
そこは信じてほしいと言って彼女と視線を交えた
「Aには、オレの情けない部分は知られたくねェんだよ」
彼は落ちついている性格だが少し臆病なところがあった
「……わかった。これ以上は変に詮索しないよ」
彼の熱意に負けてこれ以上余計なことは聞かないと決めた
「A。変に心配させてごめんな」
謝罪をした彼は彼女を優しく抱きしめた
「別にいいよ…。私もしつこく聞いてごめんね」
自分にも非があると思った彼女も素直に謝った
「気分転換に締めの一杯作ってくる…」
ソファーから立ち上がった彼女は再びキッチンに戻った
「ん。楽しみにしてる」
彼はリビングで彼女が作るカクテルを心待ちにしていた
数分後__
「締め作りながら…チョコレートリキュール、飲んでた…」
ほろ酔いを通り越して出来上がる寸前の彼女は、本日の締めの一杯を彼が待つリビングに運んだ
「カルーアミルクなんか、誘惑するためにあるような…カクテルだよね」
カシスなどと同様に飲みやすく女性がよく好んでいた
「んっ…なんだか、あつい……」
酔った彼女は火照った体を冷ますために服を脱ぎ始めた
「A。飲みすぎだ」
まだカクテルはグラスの中に残っていたが彼は彼女からグラスを取り上げた
「こんなとこで寝たらホントに風邪引くぞ」
眠たそうにする彼女は今にも寝落ちしそうだった
「せめて部屋で寝ろ」
「んぅ…。若狭、連れてって……」
両手を広げて微笑んで告げた
「ったく…わがままなヒメだな」
ため息をつきながら彼は仕方なく彼女を横抱きにした
「気を引くために…酔っ払った。って、言ったら怒る…?」
彼の腕の中で彼女は呟くように放った
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作者名:おりたん | 作成日時:2023年2月19日 9時