Shall we dance？【九井一】 ページ45
「茶番に付き合わせて悪いな」
正装をした彼は申し訳なさそうに彼女に謝罪した
「別にいいよ」
ドレスコードを決めている彼女は気にしないと言って彼に微笑んだ
「それに、社交界って…ちょっと憧れてたから」
夜会や舞踏会などの華やかな社交の場は女性の憧れであった
「A。引き受けてくれてありがとう」
彼は仕事の都合で面倒な夜会に招待された
パートナーとして自分の交際相手である彼女を選んだのだ
「全然いいよ。私は、はじめの為なら何でもするよ」
彼女は快く彼の頼みを聞いて社交界に参加した
富裕層が集う、会員制コミュニティは世界中に数多く存在した
社会的・経済的ステータスの維持の領域を超え…
同じ価値観をもった人々との交流が盛んだった
「日常生活では入手しにくい情報の共有をすることで…
ビジネスや、投資のチャンスが生まれる確率が高いんだよ」
会員制コミュニティを利用することによって、彼にとっては得する仕組みになっていた
厳選された人々との交流を通して…
ネットワークを拡大することで、金がさらに金を生む可能性があった
「こんなチャンスは滅多にないからな。
欲しい情報は絶対手に入れる」
仕事熱心な彼は真面目に告げた
「邪魔にならないように、私は傍らで控えておくね」
彼女は付き添いだが一応彼の仕事の一環なので、控えめに寄り添うつもりだった
「今日のはじめ、なんだか…」
彼女は少し頬を染めて彼を見つめた
「いつもより、カッコいいから…ドキドキしちゃうな……」
彼は普段下ろしている髪を、サイドに束ねて細めのリボンをつけていた
「サイドテール。とっても似合ってて…ステキ」
普段とは違う彼のギャップに彼女の胸は高まっていた
「ありがとうな」
褒められた彼は少し気恥しい気持ちになった
「そういうAも、ドレスアップして…いつもよりキレイだよ」
彼女の装いはとても華やかな格好だった
「ふふっ。ありがとうね。
全部美容室で着付けてもらったの」
メイクや髪型、ドレスの着こなしに至るまで…
全ての過程を美容室で行った様子であった
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作者名：おりたん | 作成日時：2022年10月1日 2時
