霧雨 ページ14
極楽浄土__
男は極楽
女は地獄
ここ吉原には正に
それは相反しての地獄楽な響きであった
日が暮れて
美涼は暗殺の計画を実行する為に見世の外に出て売人を待っていた
住み込みで働きながら既に標的と接触していた
標的と会うのはこれで三回目であった
三会目の
「あんた…傘持ってねぇのか?」
目の前に現れた標的は雨に濡れている美涼を見て驚いていた
『忘れてしまいんした』
美涼はわざと傘を持参しなかった
その方が色仕掛けで迫るときに都合が良かったからだ
『主様を張り見世で待つのは…もう飽きんした』
格子窓の部屋の事を指していた
「濡れるから入れ」
標的は美涼に向けて番傘を差した
『お優しいのですね』
そして仲睦まじいように二人で一緒に傘の中に入った
『雨は嫌いでありんす』
梅雨の時期は雨が多く降る季節であった
現在は霧のように細かい
『わっちを濡らすのは主様だけでありんす』
店長に仕込まれた営業用の口説き文句を用いた
『初めてお会いした時から…
素敵な殿方だなと…見蕩れておりんした』
その表情は極彩色の
「とりあえず…店の中に入ろうか」
標的は美涼の言葉を真に受けた様子であった
分かりやすく顔を赤くして美涼に店内に入るように誘った
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作者名:おりたん | 作成日時:2021年12月4日 10時