平行する文豪の世界【文豪とアルケミスト】【文豪ストレイドッグス】

十六 ページ18

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敦は平井を連れて探偵社に戻ることにした。国木田辺りに何か云われるかもしれないが、言動からして平井は一応「依頼人」ということになる。依頼内容は未だ聞かされていないが、若し深刻なものだとしたら放っておけない。


ちらりと平井を盗み見る。まるで観光しているかのような態度と表情に若しかしたら唯の冷やかしでは？ という疑問が生まれた。


「……依頼内容。多分深刻なものじゃないかな……」


だとしたら少しは焦りなどの感情を見せる筈だ。


「すみません。お聞きしたいことがあるのですが……。お名前は？」


「あ、中島敦っていいます」


すると、平井は先程までの笑みを消し、驚愕の表情を浮かべて敦を見た。


「……中島、敦さん？」


「はい、そうですが……。何かありましたか？」


「……いえ、知り合いに同じ名を持つ方がいまして」


平井もとい乱歩は焦った。何故、彼と同じ名前なのか。親が文豪好き？ それとも偶然？


「……真逆」


乱歩はある質問を思いついた。


「エー、中島さんの知り合いに江戸川乱歩、という方はいらっしゃいますか？」


「確かにいますが……」


矢っ張りそうだ。名乗ってはいけないと館長が云っていた理由が漸く判った。


乱歩は微笑んだ。


「此処は面白い処ですねぇ……」

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