70. 出水公平と「最悪の軌跡」 ページ33
出水side
「……――ということで補助役として機能できそうな追加メンバーを迎え入れようと思います。」
俺と太刀川さんの二人は、部隊編成について話がしたいと折紙Aに呼び出されていた。
あらかじめ用意していたであろう考察を説明する折紙に、何処か既視感を感じる。
そしてそれが以前佐鳥が変な噂を流した時のものだと気づくと、これはもう呼んであるパターンだと呆れたように彼女を見た。
仮に隊長が追加メンバーは認めないとか言い出したらどうするつもりなんだ。
「お前、人を呼ぶ時は俺らに確認取ってからにしろよ……。」
まだ折紙Aという少女の恐ろしさの神髄を知らない太刀川は、俺の言葉の意味を分かっていないようだった。
「賑やかになるならいいだろう。」
ははは、と笑う太刀川と反省の色などまるでないA。
どうか新入りはツッコミ役であってくれと願うが、彼女の知り合いという時点で若干の嫌な予感が付きまとう。
「あのさ、出水。髪飾りって持ってる？
その……この前、なげちゃった奴。」
先ほどまでの説明から転じて歯切れ悪く話し始めた折紙に、ギクリと肩に力が入る。
当然そのうち返そうと制服のポケットに保管していたのだが、この前それを入れているのを忘れて少し乱暴に扱ってしまった。
目ざといこいつがその時の傷に気づかないはずもないので、できればそのまま無かったことにしたかったのだが話題に出されてはそうもいかない。
「あのさ、お前が投げた拍子にちょっと傷ついてたから、新しく買ってやろうか？」
自分の過失を被害者側に押し付ける最低行為だが、現実的な言い訳がこれ以外思いつかなかった。
だが、訝しそうにこちらを見る折紙は意外なことを口走った。
「私、ちゃんと傷つかないように角度計算して投げたよ。」
あれだけ取り乱した状態でも、俺からの贈り物に傷がつかないように気を使って投げていたのか……？
言い訳がなくなったことに絶望するはずの場面でにやけそうになる。
「そもそも投げ付けたのだって出水の説明が……。」
しおらしい折紙を前にしてこいつがどういう人間であるか忘れてしまっていたのだ。
舞い上がった俺と流れの読めていない太刀川さん、そしてあの折紙A。
最悪の軌跡が起こったのは、追加メンバーが俺たちの元に到着するのと同時だった。
「出水がキズモノにするから……。」
「俺が、お前がいいって思うのは当然だろ！」
「……？
Aは俺のだろ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
