54. 嵐山准と「確信」 ページ17
分かっていたんだ、出水は私が嫌がるのを見過ごしてでもその人と組むのを選んだ……。
あの後私は握りしめた右手のそれを出水に投げつけ、その場を去った。
――そして、今に至る。
------------------------
嵐山side
「元はと言えば私が悪いんですよ。
"……まあ、どうせ放っておいても出水ならそのうち私の元に来るだろう。"
そんな余裕を持っていたから先を越された訳ですから。」
ほとんど家具の置いていない部屋にポツンと置かれたこたつと、そこで項垂れる折紙A。
机に頭部を預けるその姿は、どことなく迅にブラックジャックで負けた時のそれと重なるものがある。
「何もわざわざ攻撃手1位何かと組まなくてもいいと思いませんか。」
話のジャンルを言うなら"愚痴"だろう。
俺が彼女に呼ばれるときは大抵こんな役回りだ。
普通なら想い人の家に招かれて愚痴を聞かされて終わるだけなんて落胆するところなのだろうが、この子の場合は違うのだ。
"やっぱり君から見てもこういう彼女は珍しいのか？"
あの質問に対する幼馴染くんの反応は肯定だった。
たびたび彼女の話に出てくる彼にさえあまり見せない姿。
それをここまで曝け出してくれるのは、Aなりの甘え方なのかもしれない。
「Aは、太刀川さんと仲が悪かったのか？」
「いいえ、知り合いでもないです。」
話を聞いて一番気になったことを聞いてみるが、どうやら太刀川さんだから嫌という訳ではないらしい。
となると彼女は、あの幼馴染くんが取られるのを嫌がったわけで……。
その先は言葉にするか迷ったが、相手がこの折紙Aであったことを思い出す。
「それは、『嫉妬』ではないのか？」
一歩間違えば恋敵を援護する結果になりかねない発言だが、嵐山には確信があった。
「……ないですよ。
嵐山さんだって、佐補ちゃんが自分よりも腕っぷしの良い詐欺師と知らない間に結婚してたら嫌でしょう？」
寧ろ親心に近いものですよ、なんて究極的な例え話を出す彼女は、やはり折紙Aと言う少女なのだ。
この程度で甘い話に持っていけるのなら、自分もこんなに苦労してはいない。
「……その状況は佐補じゃなくても嫌だな。」
恐らくは同じ問題に俺よりも長い間直面しているであろう幼馴染くんに、敬意を憶えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
