嘘の魔薬 (ページ9)

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「ねえ、アイツだよ」

「うーわ、手つないじゃってるし」

「うらやま」

「先生カッコいい～」

今歩いているのは駅前だ。

マンションが駅に近いとだけあって、それなりに人も多い。

いま感じた視線のかずかずは、暇を持て余していた女子高生あたりが私たちのことを噂でもしていたのだろう。

女子高生に限らず、先生のことを噂する人間はたくさんいた。

…私のことも。

どうして手をつないでいるのか。

付き合っているのか。

なんであいつが？

男騙し。

顔だけ。

すぐわかれる。

などなど。

み～んな先生と付き合いたいんだ。

何も知らず。

顔だけで。

体だけ。

必死にしがみつき。

だとしたら、ずいぶんおかわいそうなことだ。

なので。

あたりがしーんと静まり返った。

「なにせ、誰もがふりかえる現役女子高生美少女とその美男教師が抱き合ってますからね～」

「ふふ、公衆の面前で？」

ギャーとさけびだす女たち。

赤面するカップル。

恋人同士なら当然のことでしょう。

先生は、抱きしめる力を少し強くした。

そして、耳元でささやいた。

「今夜は同じ布団で寝ようか」

そう言って抱き合うのをやめ、手をつないでふたたび歩き出す。

「なにアイツ～‼」

「マジムカつくわ」

「しね」

女子たちの視線をせに。

道中。

「さっきの先生のセリフ、ときめいちゃいましたよ～」

「ときめいてないくせに」

「あはは、バレちゃいました？」

なんて会話をしているうちに、やっとマンションについた。