教えて、七海先生！ (ページ43)

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五条と七海① ページ43

七海side
「んじゃ、七海の先生期間終了とAとのお付き合いを記念して、乾杯〜！」
「大声で言うのやめてください」
本当にこの人は、プライバシーというものを知っているのだろうかと呆れる。周りの視線が少し痛いが、当の本人は特に気にしていなさそうだった。
私は今、五条さんに突然「ちょっと付き合って」と言われてこうして居酒屋にいる。ついてきてしまった自分が馬鹿だったと反省したが、それも後の祭りだった。
「いやぁ、やっぱり教員の仕事、七海に任せてよかったよ。本当に助かった」
「…なら、よかったです」
「お、素直じゃーん」
酒に酔った上司はかなり面倒だった。いつもよりもからかってくる。私はそれが聞こえないかのように振舞ったが、呼びかける五条さんの声はいつもに増してうるさかった。
それから、私たちは最近の呪術界のことや後輩(主に虎杖くんやAさんたち)について話した。こういう時には頼りになる上司と共に会話することは、かなり貴重な時間だった。
「単純に気になったことがあるのですが」
「ん、なに？」
五条さんはいつもよりも機嫌が良さげな声色でそう言った。
「なぜ私に教師をやらせようとしたんですか？」
単純に気になったことだった。
人は他にもいただろうし、なぜ私だったのかが理解できなかったのだ。
「だーから、言ったじゃん。僕の大事な生徒の成長のために…」
「他にも理由はありますよね？」
少し強めの口調になったことを後悔した。けれど、それでも言葉は止まらなかった。
「わかりますよ。これでも貴方の後輩でしたから。貴方の言葉の裏には隠している本音があることくらい知っています」
本心を知りたかった。
いつも誰にでも明るく振る舞う五条さんの、心の底にある本音を知りたかった。
そんな願いが叶ったのか、五条さんは暫くしてから口を開いた。
「七海さ、灰原がいなくなってから色々大変だったじゃん？だから、灰原みたいな誰かの姿を見れば立ち直れると思った」
灰原みたいな誰か。
ふと、いつかの灰原の姿をとAさんの姿が重なった感覚を覚えた。
笑い方。
仕草。
話し方も。
私は、もしかしたら。
どこかでAさんと灰原を重ねていたのかもしれない。