押してダメでも押してみろ【宮侑】

22.怒り ページ22

・



翌日。

あのあと散々寝たにもかかわらず気分は晴れず、
重たい足取りの中出勤する。

子供じゃないんだし、こんな理由で休むことは出来ない。



「ほー…で、逃げたと？」

「………はい」




たまたま体育館の入り口で出会したシオンくんに、
しゃんとしろ、と背中を叩かれ事情聴取を受ける。




「そんなこと言ってたらずっと独身だぞ、お前」

「うわ、そんなこと言わないでぇえ…」




結婚願望くらいあるよ、私まだ若いもん。

ただシオンくんの独身発言は最もで、
いつか現実になってしまうんじゃないかと思うと身震いした。




「じゃあ、あとでねー」

「おう」




適当に挨拶を交わしてシオンくんと別れた。

ため息をついて医務室に入ると、
長い足を投げ出して座る宮侑の姿が目に入る。




「………は？」

「Aさーん、おはようさん」





ニヤリと口角を上げて笑う侑に、
嫌な予感しかしなくて冷や汗が背中を伝った。




「っ、シ、シオンくんっ！！あの、ちょ、」

「ちょっ、まてまてまて何でやねん！」




がたん、と大きな音を立てて扉から出ようとすると、
侑に羽交い締めされる。

シオンくんの声も聞こえず、
暫く入り口で侑とガタガタやりあった後、

結局力及ばずベッドに座らせられた。





「…な、によ」

　



侑は黙ったまま机にもたれかかって私を見据えている。




「なによ、ちゃうわ。昨日電話もLINEも出んかったクセに」

「う…そ、それは……ごめんなさい……」





______…どうしよう、怒ってる



だけど怒る理由も最もで、
昨日あの気まずい雰囲気のまま置いて帰った挙句、

何件も着ていたLINEも未読無視のまま、
5件はかかってきていた電話にすら出なかったのだから。




・

23.突然→←21.紛れる

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す