押してダメでも押してみろ【宮侑】

11.切望 ページ11

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コンビニに寄って、缶チューハイを買い漁った。

工場の夜景の見える橋に凭れかかって、
モモ味の缶チューハイを無造作に開ける。


勢いよくグイッと飲み込むと、
食道に熱い炭酸が駆け巡っていくのを感じた。


振り向けば無機質に聳えるビル街。

窓の一つ一つに明かりがついていて、
私の悲しみなんて世界には全く関係ないことなのだと

思い知らされる。




「……バーカ…」




ぽつり、と呟く声も、雑多な街並みに飲み込まれる。


あぁ、なんて惨めだ。

3年間も遊びだったと気付けなかったのに、
その男に会っただけで心を揺さぶられるなんて。



友人に誘われて合コンだってした。
友達に男性も紹介されたりした。


でも結局、男性不信人間不信。


誰も信用なんて出来やしなかった。





「クソ金石ぃいい！！！
ぜったい、絶対幸せになってやるんだからぁああ！！」





川に向かって大声で叫んでみても、
胸のモヤモヤなんて晴れない。

むしろ、1人でそんなことをして虚しさが募るだけだった。




「あぁ、もう…なんなの…」




残っていた缶チューハイを一気に飲み干す。

くら、と視界が揺れたが、欄干に支えられた。


情けなさか、惨めさか。

涙が一筋、頬に伝って落ちた。




「…クソ…もう、…っ、なんなのよ…」




ぐい、と服の裾で涙を拭う。

泣くな、私。
泣いたら余計に惨めになる。





「Aさーん」

「！」




聞き慣れた声、見知った声。

突如耳に入ったその声に、体がびくん、と反応する。


私を見つけてパタパタと尻尾を振る侑の姿が浮かんで、
辺りを見回した。


けれども侑の姿なんてどこにも見えず、
カップルやサラリーマンが通り過ぎるだけだった。



「……は、何やってんだ、私。」




自嘲気味に笑う。

そんな偶然があるわけがない。


なんとなしに携帯を開いてみても、
そこに『宮侑』の文字は無い。





______…当然だ。






社用携帯しか教えなかったのは私だ。

社用のものは職場に置いてきてしまったから、
連絡の手段もない。



でもなんだろう、


______…どうして、




こんなにも、侑の声が聞きたいの。





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