俺の妻 S (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,319 hit

Page1 ページ1

───静かに、家に入る。

深夜２時。
妻はもう眠っているから。

バックを廊下に置いて、
寝室へ直行する。

ベッドサイドに膝立ちして、
妻の健やかな寝顔に
そっとキスをする。

・・・会いたかった。

声が聞きたい、話がしたい。

前に妻と笑いあったのは、
いつだったっけ。

結婚してから部署が変わり、
激務になった。

朝は妻より遅い。
けれど妻は俺に気を使って
俺を起こさないで仕事へ行く。

帰宅はこんな時間で、
妻は「起こして」と言うけど
朝が早い妻を
こんな時間に起こしたくない。

完璧なすれ違いの生活。

そっと頭を撫でたら、
布団から出ている手を持って、
妻の指を口に含んだ。

一本一本、静かに、そっと。

丁寧に、ゆっくり。

手を離し、今度は足下へ。

親指から順番に、
妻の足の指を
口に含んでいく。

・・・愛してる。
俺は妻を溺愛している。

本当は今すぐにその服を剥いで、
温かな肌に触れて、
舌を這わせたい。

足を離し、布団をかけ直して
部屋を出る。

ダイニングの電気をつけると、
テーブルに食事とメモがある。

いつもの光景。

ここにだけ明かりをつけると、
本当に寂しい景色が広がって。
一人で夕食をとる妻の姿を
想像して、うつむいた。

ジニー「・・・ごめん。」

独り言。

席について、メモを読む。

『お疲れさまです。
今日は話したいことがあるから、
帰ったら起こしてね。お願い。』

話したいこと。
一気に不安が込み上げる。

こんなはずじゃなかった。
もうたくさん。
一緒にいられない。

そう言われてもおかしくない。
どんなに妻を溺愛していても、
妻はそう思えないだろうから。

これが、
最後かもしれない。

食事を電子レンジに運んで、
チンして食べる。
・・・美味しい。
妻の優しさでお腹を満たす。

パタッ、と向こうの方で物音。
すぐにスリッパの足音が近づいてくる。