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Aside


今の気分は?と聞かれたら即答で"最悪"と答える。

何回も見てきた少し薄汚れた白い天井が目の前に広がる。
どうして今日なんだ。

5限、どことなく空気が濁っている気がしてちょっと気分が悪くなった。
窓際の席だったので窓を開けようと手を伸ばすも、そのタイミングで息が激しくなる。
喘ぐような呼吸をしたくなくて抑えるもそれが返って逆効果。

静かな教室に響く息切れはなんとも惨め。

「どうしたんですか、Aさん」と先生に声をかけられて流されるように保健室。
新学期で新しいクラスだからあまり弱った姿を見せて"病弱"というイメージを与えたくない。


「A!大丈夫だった?」


5限が終わって高校2年の時から一緒のクラスの友人が訪ねてきてくれた。
私は保健室のベッドから起き上がり笑う。


「わざわざ来てくれたんだ、ありがとう。そんな大したことないし大丈夫だよ」

「6限が今年度初体育なんだけどやっぱり今年もあまりできそうにない感じ?」

「うーん、どうだろう。ストレッチとか軽いものくらいなら。去年ほどではないと思うしいずれかは…」


友人は私の言葉を聞いて「去年ほどではないんだ」と安堵の笑み。
でもこれは嘘。私が言う"いずれか"は叶うことなんてない。
どちらかというと今年の方が去年よりも酷い。

今の私は強がるのに必死だった。
いくら2年の時も仲良くしてもらったとはいえ弱みを見せれば扱いが変わる。
私が病弱と分かれば多くの人が哀れむ顔になり"普通の友人"としては接してくれなくなる。

心配されることや大切にされることはありがたいし助かるのだけど、そこには限度というものがある。
親が心配のしすぎで学校の隣に引っ越しを決めた時なんてその優しさが苦しくて泣いた。


「そろそろ私は行くね、Aはもう家に帰るの?」

「あー…この調子なら帰りのHRくらいは普通に出れるから大丈夫」

「了解ー!じゃあね!」

「はーい、いってらっしゃい」


彼女の姿が見えなくなってから大きく溜息をつく。
そしてふと昨日めいちゃんとしたやり取りを思い出した。

"また明日ここに来るんでもし良かったら来てください"

この言葉の意味が"明日も会いましょう"という意味なのは重々分かっているし、私もその言葉が嬉しくて昨日は少し寝れなかった。

…でも行けない。

今日倒れかけたしその流れでまた屋上で倒れたりなんかしたら。
きっと彼も私を哀れむ顔になるのだろう。

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設定タグ:めいちゃん , 歌い手 , utit   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ふわむにゃ | 作成日時:2021年9月2日 2時

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