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Aside
段々と蒸し暑くなってきた日の放課後。
高校三年、受験生である私は勉強の質問をするために職員室へと足を進めていた。
己の為にやっていることではあるのだけど少し足は重たかった。
先生を呼んで、職員室近くにあるちょっとした自学スペースに移動する。
そして理科の分からない問題について質問をした。
私の中で理科は5教科のうち一番苦手な教科だ。
暗記できるところはまだいいが、現象が起こる理由の説明や数式で考えるのがどうもしんどい。
先生の言葉を一語一句聞き漏らしの無いように聞いてメモを取り、問題と向き合った。
…分からない。
理解できるのだろうけどどうも頭が回らなかった。
集中できていないようで心ももやもやした気分だ。
私はこのまま続けていても駄目だと悟り30分程度説明を受けて家に帰ることにした。
体調が優れないのだろうか、帰ったらゆっくり眠ろう…と思いながら靴を履く。
ふと昇降口から見えるグラウンドに視線を移した。
「ふはっ、めいちゃん何やっとんねん!」
「いや違うんですってば!」
15メートル先からセンラくんとめいちゃんの声。
二人とも運動着に身を包んでウォーミングアップをしているようだ。
ふざけあっているのだろうか、楽しそうな表情を見せる二人。
私は思わず目を見張る。
めいちゃんって部活入っていたの?!
てっきり私と同じ帰宅勢、入っていたとしても軽音部とか音楽系の部活に入っているのだろうと思っていた。
センラくんって確か陸上部だったはず。
……つまり隣にいるめいちゃんも陸上部?
思わず見入っていると二人にマネージャーらしき女の子が駆け寄ってきた。
同学年で他クラスの子だ、「大会頑張ろうね!」と笑顔で笑いかけている。
センラくんとめいちゃんも笑顔で「ありがとうー!」と言いながら彼女からタオルを受け取っている。
"青春"…その言葉が相応しい情景を目の当たりにして誰もが爽やかな気持ちになるシーン。
…私を除いて。
顔を歪めてしまう自分がそこにはいた。
そんな自分が醜くて仕方がない。
ずし…と重い鉛がのしかかるような気分になる。
これは"嫉妬"の感情だ。
私は不安に襲われそうになって家へと足を進める。
"…帰ろう、そうしよう。私は何も見てはいない"と心の中で唱えながら。
嫉妬は嫉妬でも何に対しての"嫉妬"なのかが分からなかった。
"私ができない青春をしていること"
"同学年の女子マネージャー"
それとも、"めいちゃん"…?
どうしようもなくて俯いた。
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作者名:ふわむにゃ | 作成日時:2021年9月2日 2時