▼（終章） ページ2
雷電も、太刀風もあくまで神であったのだ。
力を持った人々は、より豊かになりたいと、互いの土地を奪い合う。……それが人の性。
か弱く、寄りそうだけであった人の様子を見ていた二人は、全ての人は健気で純粋であると信じていた。
それこそがそもそもの間違いであった。
神々のなかにも喧嘩っ早いものもいれば、気弱なものもいる。
人と神の差は、そうはない。
その差があるとすれば、それは『力』を持つか、持たざるか。
そして、命の期限。
……限りある命だからこそ、人は自分が生きた証を残そうとする。
あるものは名誉のために。
あるものは家族のために。
より多くを、自分の血に連なる一族に残そうとする。
――そのために戦う。
二人の与えた『火』はいつしか大きく燃え広がり、戦火となって大地を焼いた。
そこに来て、ようやく慈悲深い二柱の神は、己の過ちに気づいた。
「俺たちは人に火を与えてはならなかった」
「そうだな」
彼らが天界の掟を破ってまで人に与えたのは、守るための『火』。
――それは扱い方を間違えれば、人が人を滅ぼすための凶器へと転ずる。
戦火にまかれ、子を亡くし、呆然とする母親。
戦火にまかれ、母を亡くし、呆然とする子ども。
そして、多くの若い男たちの死。
それらを前にして。
やっと罪を認めた二柱の神。……彼らは自ら、投獄されることを望んだ。
かつて人々が自分たちに感謝を捧げるために立てた、『九重桜』へと。
＜終＞
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ゲーム、『俺の屍を越えてゆけ』では、この二柱の神々は、ゲーム開始時点で、九重桜にとらわれています。
それが、ゲームの進行過程の中で、主人公達一族(つまりは人……と一応は思われる)によってら解放されることになります。
が。
今回はゲームの流れではなく、ゲームが始まるまでの神々の様子を二次創作として書きました。
今後も、『俺の屍を越えてゆけ』の二次創作は、恐らく同じような内容で、色々な理由で、色々な場所にとらわれている神々のエピソードを書くと思われます。
俺屍をご存知の方は、一つの解釈としてお読みくださると幸いです。
ご存じない方は、気軽に、神話や昔話……民謡を読むつもりで楽しんでくださると嬉しいです。
A様、ここまでお読みくださりありがとうございました！
一花
【俺屍】神の業と、人の性 −氷の皇子の章-（前章） →←【俺屍】神の業と、人の性 −雷電・太刀風の章- （前章）
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作者名：一花 | 作成日時：2014年7月9日 23時
