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そのわずか数日後。
新曲のMVの撮影日だった。朝から晩まで撮り通し、少しの時間だって押す猶予もないというのに
「ジョングクがいない！？」
「はい、家にも事務所にも……電話も繋がらなくって」
スタジオの端でそんな会話が繰り広げられてるのが聞こえた。
まさか、集中力は欠けても遅刻や無断欠勤は一切しなかったのに。
「ジョングギ来ないね」
まだぽやぽやと寝起きの顔をしているテヒョンイオッパの顔を見た瞬間、この前の会話を思い出した。
「オッパ、ちょっと来て」
「ふぇ。うわぁ」
ジョングクの話をしている反対側のスタジオの端に連れてきて、小声で話をする。
「この前、ジョングクの彼女についての話」
「あー」
「あれ多分、続きありましたよね」
彼を送ってそのまま退勤したから聞くことはなかった。だけどテヒョンイオッパは続きがあるような言い方だったと思い出したのだ。
「そっか、途中で送りに行っちゃったもんね」
「はい。あの、皆さんにはまだ内緒にしていただきたいんですけど」
ジョングクが見つからない、という話をするとテヒョンイオッパの目がみるみるうちに丸くなる。
突然、がしっと私の肩を掴み耳元で
「A、今すぐ仁川空港に向かって。ジョングギはそこにいると思う」
「えっ」
「説明はあと。早く。俺の名前使っていいから抜けて行って」
「あ、はい！」
切羽詰まったような声音に何も聞けず、
「すいません、テヒョンさんが事務所にスマホ忘れたらしいので取ってきます！」
とスタジオを飛び出した。
安全運転の範囲内で車を飛ばして仁川空港に到着。
まだ朝の早い時間だからか人は少ない。これなら見つけやすそうだ、と視線を巡らせたその時、
「ハヨン！！」
探し人の声。愛しい声が呼んだのはあの子の名前で、胸の奥が痛んだ。
でも今は仕事。傷ついてる場合じゃない。
声がした方を目掛けて走り出す。
「ハヨン……何で、」
ジョングクと対峙しているあの子は、一目で高級だとわかる服を纏い大きなキャリーケースを持っていた。
明らかに旅行ではない荷物の大きさ。ジョングクの困惑した顔。
『結婚するらしいんだ』
あの時のテヒョンイオッパの話。
あ、そういうことか。
「何ですか？私たちもう関係ないので」
彼女、他の人と結婚するんだ。
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作者名：レオレ〇●〇 | 作成日時：2024年1月27日 22時
