7 ページ7
すとん、と肩の力が抜けた。
その瞬間、腹の底から怒りが湧いてくる。ジョングクに何も言わなかったであろう彼女と、怒るより先に安堵した自分に。
「関係ないって、何で」
「私結婚するんです。フランスの大企業の社長と」
「そんな、俺たち、この前200日記念日で」
「そう思ってたのはジョングクさんだけです」
何をのうのうと。あなたのせいでジョングクは傷ついて、大好きな芸能活動もままならなかったというのに。
今すぐ割って入ってしまいたかった。
でも、私はただのマネージャー。立ち入る資格はない。
「もういいですか？時間なので」
「待ってよ！」
去ろうとした彼女の腕を掴んだジョングク。
ここまで酷いことをされているのになお執着する姿勢に、どうしようもなく苦しさを覚える。
「何ですか」
「本当に、本当に俺たちもう終わりなの？本当に、その社長と結婚するの……？」
泣きそうな声だった。もしかしたらもう泣いてるのかもしれない。
「だからそうですって。…………何、明確な“終わり”が欲しいんですか？」
彼女の手がジョングクの頬に触れた。
その瞬間、私の中で衝動が走る。
させてはダメ。
それをさせてしまったら、きっと彼は一生、彼女に囚われ続ける。
だから、
「止めなきゃ」
駆けた。
「ぐぇっ！？」
「やっと見つけたぁ！！」
ジョングクの服を引っ張り、今来ましたよとばかりに息を切らすフリして言ってみせる。
キスは防いだ。よし。
「……何ですか」
彼女が怪訝な目をして私を見ている。見下す視線。
そりゃそう。
片やブランド物、片や着古してよれよれのシャツにスキニーパンツ、ボロいスニーカー。
だけどね、私はこの格好の私が一番好きだ。ジョングクの近くにいれるから。
何って何だ。
「うちのアイドルを、」
私の好きな人を、
「迎えに来ただけですが」
奪いに来ただけですが！
「ほら早く行くよ！大遅刻だからね！！」
「う、ぉおお」
服を引っ掴んだまま出口に向かい、後部座席に押し込む。デジャヴだな。
「シートベルトして！問答無用でぶっ飛ばすから！」
「え、あ、ちょ」
思い切りアクセルを踏みつけた。
スピードに乗ってジョングクの未練も吹っ飛びゃいいと思いながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レオレ〇●〇 | 作成日時：2024年1月27日 22時
