1.出会い ページ2
ざわざわとした喧騒が広がる街の中。
俺はいつものポイントへ移動する。
ここには柱によりかかり、人を待っていると装う女達が溜まっている。俺の御用達の場所だ。
俺は慣れた目で今晩やり捨てする用の女を見極めていく。
今日はついてる。顔もスタイルもいい、俺と同じく今晩のみだけの関係を求めている奴が多い。
誰だっていいのだ。関係を続けるのはめんどくさい。だがやることはやりたい。夜だけでも孤独ではないと感じさせてくれれればそれいでいい。
ふと、俺の目が止まった。
「ねぇ、お兄さん。この後空いてm………」
声をかけてきた女の手を振り払い、視線で拒絶する。
気まずそうに逃げていく女を尻目に俺は高身長美人でスタイル抜群クール女子の方へと歩いていく。
俺に気づいた女が目線を上げる。
「お兄さん。私今晩暇してる………」
「お前じゃねぇよ、勘違いすんなブス。」
嘘だ。ただそんなことはどうでもいい。どうせもう会わない。
俺は顔を真っ赤にして体を震わせる女の隣でしゃがむ。
「なぁ、お前。ここで何してんの。」
そこには明るい街の雰囲気には似合わない雰囲気の奴がうずくまっている。ダサい猫耳フードのせいで顔が見えず、女か男かどうかもわからない。
「おい、でかい耳がついてるくせに聞こえてないってことはねぇよな？」
バシッとフードを手で払うと顔が見えた。
「………っ」
ゆっくりと顔を上げたそいつと目が合った。
長いボサボサとした前髪。隙間から見えた目に思わず俺は吸い込まれそうになる。
思わず目を反らしもう一度見る。ただの目だった。だが見ているのだ。俺のすべてを覗き込むように。
「何してるんだよ。」
もう一度聞くが返答はない。じっと俺を見ている。
返答があったとしても意味はない。俺の人生とこいつの人生がこれ以上交わることはない。
そう思い立ち上がり、すっかり萎えた心と一緒に家への道を急ぎ始めた。
途中、いつものコンビニへと立ち寄る。目についたおにぎりを手に取ろうとした時、ふっとあいつの目を思い出す。
「………。」
10分後。
「お前……、まだ………いるのかよ……。」
俺はコンビニの袋片手に少し息をしながらあいつの元に戻っていた。
「ついてこい」
俺はそいつの手を引き、立たせる。
前言撤回だ。今日は全くついてない。
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作者名：金魚 | 作成日時：2020年4月9日 22時
