2.名付け ページ3
家につれて帰るまでお互い一言も口を開けなかった。
あいつは抵抗することもなく付いて来た。
明るいところで改めて見ると、
「汚い。」
猫耳フードはもちろん、ボロボロのジーンズ、靴。ボサボサの髪、血の気のない顔。
こんなにボロボロなことが普通あるだろうか。
玄関に入ったままぼーっとしているあいつの肩を押し、風呂へと入れる。
ため息をつき、替えの服を出す。下着は、どっちでもいいか。
「ガタンッ!!」
風呂場の中から何かを落とす音が聞こえる。
手でも滑らしたのか。
少し心配している自分に嫌気が指す。
男だか女だかもわからないあんなやつを保護する義理は俺にはない。明日の朝には出ていってもらわなければ。
キッチンへ行きホットミルクをなんとなく2つ作り、ソファに腰掛け携帯を触る。
Twitterを見て、LINEを見て、返したいものだけ返信を送る。
「ガチャッ」
ドアの開く音がした方を見ると髪からしずくの滴るあいつが立っていた。
「ちょっ、お前、かみっ……あーーもうっ!!」
急いでタオルを手に取り髪を拭いてやる。
(女か。)
服の中に隠れていただろう髪は思いの外長く繊細そうなものだった。顔立ちもよく見れば俺より少し年下くらいの20くらいの女のものだった。
濡れた床をふきながら考える。
(物語ではこのままラブ展開なもんだがどうにも色気がない……。)
「おい、猫。そこの替えのタオルとれ。」
「………。」
「猫耳フードだったから。」
理解するとバカにしたように少し笑った。
「今すぐ外へ蹴り出すぞ。」
俺はタオルを受け取った。
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作者名:金魚 | 作成日時:2020年4月9日 22時