25. そうとうないちにち_4 ページ25
※唐突な軍パロ入ります。
ゲーセンを出たときにはもう夕暮れ時だった。
ご機嫌に戦車の箱を片手で抱きかかえるグルッペンのもう片方の手はしっかりと私の手を握っている。
「引き際を間違えたな」
「撤退がうまくいかない作戦はゴミなんじゃなかった?」
「目標物を前に撤退はありえんだろう。」
あの後まうまう(戦車の愛称らしい)に幾数かのお金と時間を溶かしたグルッペンはしかし満足げな表情をしていた。
呆れながらもいいタイミングだと思い、気になった事をグルッペンに聞く。
「グルッペンは犬だったのにどうやって戦車とか作戦とか学んだの?」
「む?俺たちは元々人間で犬になったんだゾ。そこらへんは人間のときの知識だな。」
「え?」
「まあいろいろあったんだが…」
言葉を濁すグルッペンにずい、と身を乗り出して言う。
「聞かせて。グルッペン達のことが知りたいの。」
「……いいだろう。」
まあ昔の面白くもない話だが、と前置きして彼は話し始めた。
「俺たちは国籍は違うが同じ出身でな、昔から一緒に遊んだりしていた。戦争ごっこが好きだったな。」
「俺たちは…紆余曲折あったが大人になり、軍に入って別々に小隊を組んだ。」
軍、という言葉に現実味が薄れかけたが、グルッペンの冷たい目を見て嘘を吐いてない事に気づき戦慄する。
「俺たちが小隊を組んだときには正直もう国は手遅れでな、撤退手段がないほぼ特攻のような作戦を命じられたんだ。」
「その後は…」
少し口ごもったグルッペンは、その行為を掻き消すように邪悪な笑みを浮かべた。
「俺は小隊を裏切った。」
「1人で逃げ出して…その結果仲間に呪いをかけられてこのザマだ。」
「なあA、俺の事をどう思う。」
言葉を吐き出したグルッペンの目は、表情に反して笑っていなかった。
ああ、これはグルッペンの虚勢なのだろう。不敵な笑みもゲスのような邪悪な笑いも、自らの弱さを隠すためのハッタリで。
…それを糾弾することは、私には残酷過ぎてできない。
「私が言える事は少ないけど…グルッペンが生きてて良かったって思う。」
「そうか。」
「グルッペンは、自分の事どう思ってるの?」
「さあ、わからんな。」
卑怯だ、と小さく呟くとグルッペンは真顔になる。
「A」
「……何?」
「俺の事を軽蔑したか?嫌いになったか?」
「…ううん。」
「では、好きか?」
「…………」
「俺は…」
「俺はお前が好きだ。これからの人生を共に過ごさせてくれないか。」
519人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
身長100m - いや。普通に大好きです。結婚しましょう (2021年1月3日 14時) (レス) id: baba500277 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁこ(プロフ) - 頑張ってください…いつまででも待ってます (2020年3月6日 19時) (レス) id: f472df8b77 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ゆっ家族 - もう、うるっときちゃったじゃないですか。何ですかこの作品。最高すぎます。こんなの、評価満点以外選べないですよ。設定も、物語の進み方も、全部好きです。呪いのことやメンバーとの関係、過去についても惹かれるものばかりです。これからも応援しています (2018年5月12日 11時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃよーるど(プロフ) - ミーさん» 再びコメントありがとうございます〜! 完全に趣味で月光を選んだのでイメージが伝わって何よりです笑 やっと仲直りです、が、だいぶ展開が遅いと思いますので期待せずお待ちください、、 (2018年4月14日 22時) (レス) id: 50cd7cd971 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 更新ありがとうございます。月光を弾くグルさん…!想像しなくても優美な感じがしますね(笑)仲直りをした主とグルさんがこれからどうなってくのか楽しみです(^-^) (2018年4月8日 17時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふぃよーるど | 作成日時:2018年3月10日 19時