Orange halation 2 【S.S/K.N】〈完結〉 (ページ4)

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どれくらいの間、そうしていたんだろう。

櫻井さんがゆっくり体を離した。

「……話せてよかった」
「私も、です」
「A」
「はい」

「お前も、もう俺に固執するな」

一瞬何を言われたのか、わからなかった。

さっき。

櫻井さんと私に流れていた時間は、確かに心が繋がっていたような気がしていたのに。

「……どういう意味ですか？」

「そのまんまの意味だよ。
俺を想ってくれていたのは、あの時の特殊な状況やタイミングよく聞こえた言葉のせいで。
恋愛の『好き』とは違う」

「そんなこと」
「じゃあ会社で上司と部下として初めて会っていたら、お前俺のこと好きになってた？」

思わず答えに詰まる。

雲が流れて、月が少し隠れた。

「本当の意味で。
お前はまだ前に進んでないんだよ。
あの時の言葉にもう頼らなくていいなら、俺を追う必要もない」

櫻井さんの言葉は正しいような気がした。

でも少し違和感を感じていた。

それがうまく言葉にできないのがもどかしい。

「俺も今日話せて監督のことやっと区切りがついた気がするし」

ちょっと一人で飲んでくわ、って軽く手を上げると櫻井さんは歩き始めた。

追いかけたいような衝動に駆られたけど。

もうこれ以上何を言っていいのかわからなかった。

違うのかな。

今側にいたいって思うこの気持ちも。

「好き」とは違うのかな。

・

ぼんやりしたままホテルに帰ってくると、フロントでルームキーをもらう。

エレベーターから降りると。

部屋の前に、ドアにもたれた二宮くんがいた。

「お帰り」
「ただいま……え？ずっとここに？」
「違うわ。そんなことしてたらホテルの人に怪しまれるでしょーが」
「そっか」
「外見てたら帰ってくんの見えたから。一人で」

私が黙ると、二宮くんは私の頭をぽん、と軽くたたいた。

「よかった」
「え？」
「泣いてなくて」

私が曖昧に笑うと、二宮くんはほっぺたをむにってつねった。

「無理して笑わない」

なんでもお見通し。

「ごめんね。
せっかく待っててくれたけど今日はちょっと話せないと思う。
まだ混乱してる」

「ん。わかってる」

優しい声に力がふうって抜ける。

「疲れた？」
「そうかも」

「癒してあげよっか」

薄茶色の瞳に吸い込まれそうになって、首をぶんぶん振った。

「だめだよ、今混乱してるんだって」

「もっと」
「もっと？」

混乱しちゃえよ、って。

二宮くんが囁いた。