Orange halation 2 【S.S/K.N】〈完結〉 (ページ12)

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次の日の朝、コーヒーを入れにいく二宮くんを給湯室まで追いかけて行った。

「二宮くん」
「はよ」
「おはよう…あの、ね」
「朝からノロケは勘弁してくださいね」
「ち、違うよ！」
「じゃあなに？」
「ちょっと会社では話にくくて。今日仕事終わったら会える？」
「……いーけど」
「じゃあ駅前のタリーズで待ってるね」
「飯」
「え？」
「コーヒーじゃなくて腹減ってるでしょ、会社終わったあとなら。飯にしよ」

櫻井さん嫌じゃないかな、とふと思ったけど。

よく考えたら付き合ってるわけでもない。

キスしただけで彼女ヅラするなんて図々しい。

私が二宮くんとコーヒーを飲もうがご飯を食べようが櫻井さんにとってはどうでもいいことかなって思った。

「うん、わかった。何食べたいか考えておいてね」
「あ、奢ってくれんだ」
「割り勘に決まってる」
「ケチ」
「どっちが！」

笑いながら給湯室から出てくると、廊下を歩いてくる櫻井さんと目が合った。

けれど、その目はふいっと逸らされて早足で歩いて行ってしまった。

「避けられてんの？」

二宮くんが視線で櫻井さんを指す。

「そんなことない、と思うけど……」

「あ、もう9時だわ、仕事仕事！」

二宮くんが時計を見てそう言ったので、私も慌てて自分のデスクに戻った。

櫻井さんはその日終日外で打ち合わせで、結局何も話せないままだった。

「昨日どうしてキスしたんですか？」って聞きたいけど会社で聞けるわけないし。
挙動不審になるからちょうど良かったかも。

・

今日は定時で仕事も終わり、ハンバーグが食べたいという二宮くんのリクエストに応えて、ビストロに足を運んだ。

二宮くんは目玉焼きののったハンバーグ、私はビーフシチューを頼むとさっそく本題に入る。

「実は、ね。これを観せてもらったの」

テーブルに智からもらったDVDディスクを置く。

「何これ」
「映画」
「なんの」
「二宮くんが撮った」

二宮くんがあっけにとられたように口を開いたまま固まってる。

「漫才師を目指してる女の子の」
「ちょっと待てって。そんなのどこで」
「智経由で」
「そこか」
「お願いがあって」
「やだ」
「まだ何も言ってないよ！」
「イヤな予感しかしない」

「二宮くんが撮った映画、他にも残ってるなら観たいの」

はああって大きなため息。

「なんで今さらそんな大昔のやつ引っ張り出してくんのよ」

「お願い！観せて！」

私が必死に頭を下げると。

また、はああって大きなため息が聞こえた。