ランタンとオレンジ 2 ページ8
自室の扉を閉め鍵をかけると、リヴァイはテーブルにランタンとオレンジを置く。そして、紅茶を入れるために、奥にある簡単なキッチンへ向かった。
白いホーローのケトルを火にかける。運良く誰にも会わずに済んだ。今夜は静かに過ごしたい気分だった。何故かわからないが、そういう気分だ。紅茶の葉がさらさら音を立てて、ティーポットへ落ちた。
沸かしたての湯を注ぐと、甘い香りが立ち込めた。
ポットとソーサーに乗せたカップを持つと、リヴァイはソファへ腰を下ろした。
テーブルにカップを置き、紅茶を注ぐ。琥珀色のそれは、ソファとは反対側にある大きな窓から差す月の光を反射して、キラキラと輝いた。
紅茶を一口飲むと、リヴァイはおもむろにオレンジを手に取った。不思議な夜だった。何も不思議じゃないのかも知れないが、見ず知らずの女を助けた。Aと言ったか、不思議な女だった。そう思う理由は、リヴァイにも良く分からなかった。帰りがけにオレンジをもらったのは、腹が減っていたわけではない。言わば証拠のような、不思議な夜との繋がりというか、そんなものが欲しかったのかも知れない。
朝になったら、このオレンジは消えているのだろうか。
「フン、そんな訳ねぇか」小さく呟いた。Aから渡されたランタンの炎は、まだゆらゆら揺れていた。オレンジをかざしその色に目を細めると、リヴァイはオレンジを鼻に近づけ、香りを嗅いだ。皮を剥かずとも、甘酸っぱい香りがして
──また、会えますか──
あいつの声が、耳の奥で再生された気がした。
俺はまた、あいつに会うことは、あるだろうか。
リヴァイは、明日消えてしまうかも知れないオレンジの皮を剥き始めた。ひと房摘んで口に放り噛むと、やはり甘酸っぱい味がした。そうして全部食べ終わると、浴室へ消えていった。
翌朝、ソファで寝ていたリヴァイが目を覚ますと、ランタンの横には少し乾いたオレンジの皮があった。
また、会うことが無いとも言えねぇな、そう思っていたリヴァイだったが、Aの家からそんなに離れていない場所に住んでいる自分が、その後仕事に追われ、あの路地は愚か、露店のある大通りすら、長い間通ることもなくなるとは、思っていなかった。
そうして、数週間が過ぎた。
部屋にはまだランタンが置かれ、その横には、しっかりコルクで栓をした、綺麗なガラスの小壜があった。中には、あの干からびたオレンジの皮があった。
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ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
