出逢い6 ページ6
「はい…」Aの瞳にはもう、涙は無かった。代わりに、兵士から分け与えられたかのような、同じ色の炎がゆらゆらと揺れていた。家族と死に別れ、同じような境遇の人々と、涙を流しながら慰めの言葉を交わしたことは何度もあった。だが、こんな風に、涙も止まるような、目が覚めるような、この先の道を照らすようなことを言われたのは、初めてだったのだ。
「じゃあな、達者でいろ」そう言うと、兵士は薄暗い部屋の中を引き返そうとした。「あの…」Aは慌てて声をかけ、サイドテーブルにあったもうひとつのランタンに急いで火をともし、兵士に声をかけた。
「何だ」振り返った兵士は、すこし面倒くさそうに言ったが、Aは短く息を吸って吐き出し、きちんと座り直した。
「今日は、本当にありがとうございました。私、頑張って、強く生きていこうと思います」さっきまでの弱い気持ちを吹き飛ばすように、Aは力強く言った。
「それと、これをお持ちください。外はもう真っ暗なので」そう言うと、Aは、先程のランタンを兵士に差し出した。
「じゃあな」ランタンを無言で受け取ると、兵士はくるりと向きを変え、歩き出した。自由の翼がだんだん遠ざかり、Aはまだ、大切なことを聞いていなかったことに気付き、再び声をかけた。
「あの！！」焦ったためか、思ったより大きな声が出てしまい、自分でも驚いた。
「何だ。まだ何か用か？ もう戻らねぇといけねぇんだが」首だけを回して、兵士は言った。不機嫌そうな声に聞こえたが、Aは、臆せず聞いた。
「お名前をお伺いしていませんでした…すみません」Aはドキドキして、語尾はだんだん消え入ってしまった。
「リヴァイだ」兵士は諦めたかのように、こっちに向き直って言った。「お前の名は、何だ」
「Aです」
「Aか。悪くない名前だ」
「あの、今日のお礼がしたいのですが…また会えますか」Aは、恐る恐る聞いてみた。
「わからねぇ。俺も暇じゃねぇからな。それより腹が減った、これをもらってもいいか？ 礼はこれで構わねぇ」そう言うと、リヴァイは荷車に山積みになっているオレンジをひとつ、おもむろに取り上げた。
「もちろんです。そんなものしかなくて、ごめんなさい」Aは、申し訳なさそうにそう言った。
扉を開けると、兵士はこちらを振り返ったが何を言うわけでもなく、すぐに通りに向き直り、手が離れていった。扉が閉まる刹那、オレンジを持つ長い指が見えた。
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ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
