オレンジティー 2 ページ43
Aの潤んだ瞳には、心配そうに見つめるリヴァイが映っていた。腕に閉じ込めたAは以前よりも小さく脆く感じて、リヴァイはAの頬を伝う涙をそっと親指で拭った。
｢悪かった…心配かけたな｣
Aは何も言わず、リヴァイの胸に顔を埋めた。
｢緊急で任務が入っちまって…詳しくは言えねえが｣
Aは、小さくしゃくりあげる。
｢すまない、辛い思いをさせたな｣
Aはリヴァイをもっと強く抱きしめた。
｢お前には…心配をかけてばかりだ｣
｢おか…え……り｣
顔を胸に預けたまま、Aが口を開いた。
｢ああ｣
｢おかえりなさい、リヴァイ｣
｢待たせたな｣
｢うん……いっぱい待ってた｣
｢遅くなりすぎた｣
｢リヴァイを愛しているから、待っていられたよ｣
｢そうか｣
｢鍵を閉め忘れたのも、俺のせいだな｣
｢うん｣
｢厳しいな｣
｢うん｣
｢飯を食ってねぇだろ、お前｣
｢うん｣
｢それも、俺のせいか？｣
｢うん｣
｢腹、減ったか？｣
｢…うん。リヴァイとふたりで、食べたい｣
｢そうか｣
｢でも、何もないの。引越しの準備して、リヴァイが来なくて、次の日もその次の日もリヴァイが来ないから…私だんだん…どうしていいか分からなくなって……それで……｣
｢わかった…わかったから、もう話すな。食い物なら、俺が持ってる｣
Aが顔を上げると、リヴァイはAを抱き上げた。そうして、ソファまで歩いていくと、そっと下ろした。
｢紅茶を淹れてやる。待ってろ｣
リヴァイはそう言うと、キッチンに消えていった。
裏路地からは秋の風が吹き込み、少し肌寒く感じたAは、両手で肩を抱き込んで膝を曲げ、リヴァイが来るのをじっと待った。
やがて、甘い香りを漂わせて、リヴァイがティーカップをひとつだけ持ってきた。
｢荷造りしたから、ティーポットとカップがひとつしかねぇようだ｣
そうだった。おばさんから頂いた紅茶を飲むために、ティーポットとティーカップだけ出しておいたのだ。リヴァイが来たら、最後にそれをしまって家を出ようと思っていたから。
リヴァイが横に座った。
｢ちょっと待ってて｣
Aはそう言うと、そばにひとつだけ置いてあったオレンジと小さなナイフを取ると、半分に切ってから薄くスライスした。
｢紅茶がリヴァイで、オレンジがわたし｣
そう言って、紅茶にオレンジを浮かべた。
｢ずっと一緒の、おまじないだよ｣
ふたつが混ざって、甘酸っぱい香りがした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
