片翼 1 ページ34
Aの部屋を訪れてから、しばらく忙しい日が続いていた。仕事に追われ心が乾いていても、Aに会いに行く時間は取れなかった。天気のいい午後には外に出てみたりもしたが、バスケットを持って微笑むAをついに見つけることはできなかった。もしかしたらあいつが会いに来てくれるのではと、微かな期待を込めて門の外に出てみても、切なさが込み上げてくるだけで、リヴァイは早くあいつを自分の部屋に呼ばなくてはと思うのだった。深夜に自室に戻り扉を閉めると、妙な寂しさを感じるようになっていた。あいつに会うまでは、こんな気持ちになったことは無かった。
疲れて帰り、扉を開けると、いつもあいつがいる。それは、どんな感じなんだろうか。
俺はあいつに、こう言うだろう。
『待たせたな』
あいつはきっと、笑顔でこう言うだろう。
『おかえりなさい』
俺はAを抱きしめて、キスをしてやる。
あいつは、この世界で一番綺麗な花よりも、さらに美しく微笑むだろう。
その日もいつも通り深夜に自室に戻ったリヴァイは、キャビネットからウィスキーのボトルとピカピカに磨かれたグラスを手に取ると、ソファに腰をおろした。そして、グラスにウィスキーを注ぐと、少し口に含んだ。一気に口の中から喉へ、ビリビリときた。甘い香りが鼻を抜け、またひと口飲んだ。
あいつを、この部屋に呼びたい。
一緒に、暮らしてぇ。
エルヴィンに、言わなくちゃなんねぇな。
残りのウィスキーを一気にやると、リヴァイは立ち上がり、扉に向って歩き出した。
エルヴィンの野郎、もう寝てやがるか？
リヴァイは部屋を出ると、エルヴィンの部屋へと歩き出した。
※
「エルヴィン、俺だ、リヴァイだ。話がある」
ややあって、返事が返ってきた。
「今、開ける」
ガチャリと鍵を外す音がして、エルヴィンが顔を出した。まだ仕事をしていたようだ。
「悪いな、こんな時間に」
「気にするな、入れ」
リヴァイは扉を閉めて、ソファに座った。
「ウィスキーでいいか？」
「まだ仕事中なんだろ？」
「今日は終わりにする。久しぶりにお前と飲みたいからな」
エルヴィンは氷を入れたグラスとウィスキーのボトルを持って、向かいのソファに座った。小気味いい音を立ててウィスキーが注がれる。
「今日も、ご苦労だった」
そう言ってエルヴィンはグラスを渡した。リヴァイはしばしゆっくり溶けだす氷を見ながらこう言った。
「エルヴィン、お前は自分を完璧だと思うか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
