Close to you 3 ページ29
太陽は登っていたが、締め切った部屋はまだ薄暗かった。
静かな寝息を立てるAの白い背中を、リヴァイはもう一度抱きしめた。Aの髪に鼻先をうずめて、リヴァイはこれ以上無い心地よさを感じていた。
俺は、Aを抱いた。
涙ぐむAの瞳に、俺は自分を抑えられなかった。
意識が飛びそうなほど、互いに求めた。
何という、幸福感だろうか。
俺がどれほどお前を愛しているか。
これで、お前は安心しただろうか。
俺は、お前のものだと。
お前は、俺のものだと。
Aのうなじや背中には、俺がつけた痕が、赤く滲んでいた。指でそれをなぞる。Aが身じろぎして寝返りを打つと、愛らしい寝顔が現れる。
頬は薄く色づいて、穏やかな寝顔だ。こいつの事だ、夕べは眠れなかったんだろう。辛い思いをさせた。
「リ…リヴァイ…」
俺の名を呼んでいる…眠っているのにな。夢の中でも、俺のことを思っているのか。
リヴァイはAの瞼に口付けた。そして、Aの手をそっと包んだ。
──俺なら、ここにいる──
Aがリヴァイの手を優しく握り返す。
愛すること。
愛されること。
生きるのに、必要ないと、思っていたこと。
手に入れた今、こんなに穏やかな気持ちになれる、俺がいた。
生まれて初めて、自分を大切にしようと、強く思えた。こんな俺が、俺の中にいたとは…お前のおかげだ。気付かせてくれた。壁の外は地獄で、壁の中は…別にどうでも良かった。仕事をこなし、エルヴィンと酒を飲む。話も壁外調査のことばかりだ。
いつの日か、自由を手に入れるために、飛び回り、命をすり減らす。死んでいった勇敢な部下の為にも、いつの日か…いつの日にか…。
俺も人間だ。辛い時もある。
そんな俺の人生に、お前は現れた。
お前といると、生きている喜びを感じられる。
生きていくことに、余裕を持つことができる。
リヴァイは、Aの髪を指で梳く。何度も何度も。
無理をさせたか…そうとう疲れているようだ。
Aはまだ深い眠りの中だ。
いつ別れが来るか分からないこの世界。
また、生きてお前に会えるとも限らない。
だから、お前を抱いた。
お前も、頬を上気させて、応えてくれた。
お前がいなければ、生きていけない…そんな気さえする時もある。お前も…そうなんだろう？
人は、独りでは、生きてゆくのが難しい。
こんな風に考えるようになるとはな。
お前は、俺の、生きていく力だ。
愛している。
Close to you 4→←Close to you 2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
