虜 9 ページ26
少し肌寒い風が吹く中、リヴァイに手を引かれたまま、Aはだんだん緩やかになる坂を降りた。
街並みが近づき、途端に現実に引き戻される感じが、たまらなく嫌だった。Aはただ、繋いだ手から伝わってくるリヴァイの体温と、綺麗に整えられた襟足や脚に巻かれたいくつものベルトなどに目を向け、街の喧騒さえも耳に入れたくない一心だった。今は背中の自由の翼も、見たくなかった。それはもはや、自分からリヴァイを連れ去る翼にしか見えなかった。そして、そんな風にひねくれている自分が嫌だった。
いつしか門はすぐそこに迫り、別れの時はすぐそこだった。
門の手前でリヴァイは立ち止まり、Aもまた、俯いたまま、足を止めた。
「今日は、ありがとうな」
「こちらこそ、ありがとう。楽しかった…」
絞り出すような声でAは言った。
「おい、顔を見せろ。いつまでそうしてるつもりだ」
「うん…今の顔は…ちょっと、見られたくないから」
「何言ってやがる」
リヴァイは、まだ下を向いたままのAの顎を指で持ち上げると、今にも泣きそうな潤んだ瞳があった。
「ね、だから、こんなだから…泣き虫だから…こんな変な顔になってるから」
「変じゃねぇ」
リヴァイはそう言うと、Aの顎を少し持ち上げて、そっとキスをした。唇が離れてゆく。
「ありがとう、リヴァイ。私、もっと強くなるから」
リヴァイからバスケットを受け取って、Aは必死に笑顔を作った。
「じゃあ、またな。元気でな」
「うん、またね。リヴァイも身体に気をつけてね」
「ああ」
そう言って、リヴァイは向きを変えると、門の中へ入ってゆく。門番がペコペコしている。遠ざかるリヴァイの背中を見つめながら、Aは動けずにいた。バイバイ、リヴァイ。Aが背を向けようとすると、背の高い女の人がリヴァイに駆け寄ってきた。髪を無造作に縛り、ゴーグルを頭に乗せている。やがて大きな声が聞こえてきた。リヴァイの背中をバシバシ叩きながらしきりに話しかけている。
「リヴァイ〜どこ行ってたの〜？ランチしながら話したいことあったのに〜！外に出るの珍しくな〜い！？ねぇ〜ねぇ〜〜！！どこ行ってきたの〜？」
「うるせぇな！ 触んじゃねぇ！」
あの女の人、リヴァイの仕事仲間かな、兵服着ているし。いいな、いつも一緒にいられるんだろうな。
Aはたまらなくなって、走り出した。
リヴァイが振り返ってその姿を見ていたことを知る由もなかった。
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ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
