虜 1 ページ18
激しい雨がバチバチと大きな音を立てて、窓を打ち付けてゆく。まだ昼過ぎだが、空には黒い雲が立ち込めて、薄暗かった。昨夜から激しい雨が続いていて、止む気配もなく、お店は開けなかった。表通りに面した窓の外をぼんやり見つめ、コーヒーを飲んでいた。テーブルには、光る鉱石とリヴァイのハンカチと、ブルーグレーウイングが置いてあった。Aは何をする訳でもなく、目の前に置かれた3つの宝物を、代わる代わる手に取ってはコーヒーを飲み、空を見上げたりしていた。
──しばらく、忙しくなる──
あれから、どれくらい経っただろうか。リヴァイは…どうしているだろうか。危ない目にあっていないだろうか。壁の外に行ったりしているのだろうか。
毎日、リヴァイのことを考えていた。店に出ていても、パンを食べていても、オレンジを運ぶ時も、ひとりの部屋にいる時も、ランタンに明かりを灯す時も、ベッドに入ってからも、片時もリヴァイのことを想わない瞬間は無かった。会っていても、会えない時間も、いつも胸が苦しかった。心臓を巡る血液でさえ、リヴァイのことを想っている気がした。
ため息だけが幾度も漏れ、その度に、あの切ないキスを思い出した。リヴァイがくれた、初めてのキスは、身体中を駆け巡り、私に虜の魔法をかけた。
リヴァイの虜。なんて、危うくも美しい響だろう。
まだ雨は降り続いていた。この薄暗く寂しい雨の向こうに行きたい。リヴァイのところへ行きたい。会いたい。抱きしめて欲しい。
季節は初秋へと変わっていた。オレンジを店で売るのも、あと少しだ。木箱の底がところどころ見えるようになった。冬は何をして過ごそうか。
「明日、晴れたら…」Aは唐突に、自分に言い聞かせるように呟いた。明日、晴れたら…リヴァイに会いに行こう。会いたくて、心臓が悲鳴を上げてる。もう心がもたないよって。元気にしてるなんて、嘘だ。無理なんだ。リヴァイに会えない時間、元気にしてるなんて、できないんだ。
血液から心臓へ、そして心を伝って、目から涙が溢れた。愛が頬を伝って流れ、カップのコーヒーに切ない波紋を作り、消えた。目のふちをそっとなぞって、涙を拭いてくれるあたたかい手は、隣にいない。
Aは自分で涙を拭った。コーヒーを入れ直して再び窓際に戻ると、雨は少し小降りになったようだった。微光(うすびかり)が、窓に付いた雨粒を優しく包んで、Aは、明日は晴れる、そう思った。
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ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
