ブルーグレーウイング 4 ページ12
雨は少し弱まったが、未だ上がらずにいた。通りを歩く人影はなく、露天の屋根の下に、ふたつの人影があった。屋根の先から雨水が次から次へと滴り落ちていた。
「あの夜、荷車に揺られながらあなたの背中の自由の翼を見て、背中に羽が生えていたらいいのに…そう思いました。もし飛べたら、巨人の手の届かない空を飛べたら」Aはそこで1度言葉を切り、続けた。「壁の外に出ても、無事に帰ってきてくれる…そう思って、2枚の翼をずらして羽ばたいている翼にしたんです」
「帰ってきてくれる…とは、俺のことか？」
「はい、あなたのことです」Aはまた、赤くなりそうだった。
「そうか、ありがとうな」リヴァイはAの目を見て言った。「もうすぐ壁外調査がある。一週間後だ。必ず持っていく」
一週間後に壁外調査…Aは何も言わず、次第に激しくなる、張り裂けそうに痛む胸に手を置き、リヴァイに気づかれないように深呼吸をしたが、僅かに肘が触れ合い、リヴァイが聞いた。
「どうした？具合でも悪いのか？」
「いえ、ただちょっと、胸が苦しくなって…でも大丈夫です。壁外調査、頑張ってくださいね」泣きそうになるのを必死でこらえて、Aは何とか震える声を絞り出した。
「ああ」リヴァイは軽く返事をした。雨は小降りになり、空は徐々に明るくなりつつあった。Aはまだ胸に手を当てたまま俯いていた。
「そろそろ戻る。ハンカチ、ありがとうな」そう言ってリヴァイは立ち上がり、通りへと歩き出した。胸に手を当てたままAも立ち上がった。
「さようなら」このまま雨が降り続けばよかったのに。
「ああ」
リヴァイが遠ざかってゆく。自由の翼が揺れて、徐々に小さくなってゆく。夕立の後の通りを、細い影が遠くなってゆく。もうすぐ、危険な壁の外に行ってしまう。命をかけて、旅立ってしまう！そう思ったら、Aはオレンジの山からひとつ掴み、走り出していた。
バシャバシャと水しぶきを上げながら、ただ、必死に走った。待って、行かないで。まだ、話したいことがある！
水音が、リヴァイの鼓膜を震わす。
だんだん近づいてきて、リヴァイは足を止めた。予感がしたのだ。もしかしたら、あいつが追って来るんじゃないかと。あまりにも簡単な別れだった。簡単すぎる言葉だった。次にいつ会えるのかも分からないのに。次に、生きて会えるかも分からない、この世界なのに。
水しぶきが視界に入った気がして、リヴァイは振り返った。
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ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
