出逢い1 ページ1
夕暮れ。
西日の差す店で、読みかけの本を閉じると、Aは店じまいの準備をしようと腰を上げた。
椅子の横には、タイトルも擦り切れた古ぼけた本が数冊、重ねてあった。彼女の読む本はどれも拾ったものや、譲ってもらったものばかりだった。
新しい本を読んでみたいが、それを買うお金は、Aには無かった。
店先には、傾いた夕陽に輝くオレンジが、山のように積まれた木箱が3つあるだけ。Aの店は、オレンジのみを売っていた。契約している唯一の農家がオレンジ畑しか持っていなかったのだ。ほかの果物も仕入れたいと思ったこともあったが、そんな余裕も無く、オレンジだけを細々と売って、生計を立てていた。
Aの住む部屋は、店から30メートル離れたところにあった。部屋といっても、廃墟となった石造りの建物の一角を、勝手に使っていた。
毎日この時間になるとAは、荷車に3つの木箱を乗せ、部屋まで運ぶ。
その日もAは、1つ2つと箱を乗せ、額の汗を手の甲で拭うと、3つめを持ち上げた。荷車に乗せようと足を踏み出すと、左足に激痛が走った。
ドサッ
木箱からオレンジが宙に舞い、倒れたAの周りに次々と散らばった。靴がもう古かったのだ。
底は擦り切れ穴があき、血の滲んだ靴下が見えていた。小石を踏んで、ケガをしたらしい。
道に散らかったオレンジは、まだ往来のあるこの場所では、踏みつけられるか、盗まれるかのどちらかだ。
早く拾わねばと立ち上がろうとしたその時、背後から声をかけられた。
「おい、大丈夫か？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちか(プロフ) - (*´∇｀)さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます。面白いと言っていただけて、大変嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、頑張ります(^^♪ (2018年8月5日 7時) (
レス) id: d18ebea9c2 (このIDを非表示/違反報告)
(*´∇｀) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: 737145386d (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
琴 - ちかさん» 更新楽しみに待ってます(^｡^)頑張ってください！ (2018年7月27日 8時) (レス) id: 8f97a39ef4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - 琴さん» 初めまして。読んでいただき、ありがとうございます！私自身、ときめきたくて書いているので、そう言っていただけると、とても励みになります。のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 0d180ac097 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ch | 作成日時：2018年2月28日 18時
