続 ページ25
「こういうのって、僕の得意分野だと思うんです」
審神者部屋の丸いちゃぶ台に身を乗り出し、喜々としてそう告げる毛利。その瞳はとても爛々としていて、曇りなどひとつもなかった。
純粋なのか不純なのかよく分からない彼を宗三と膝丸はじっとりと見詰める。
「つまりどういう事だ」と膝丸が口を開く。頬杖をついた宗三は短い溜め息を吐き窓から枝にとまる鳥に視線を移した。
「小さい子、出てきてくれませんかねえ」
「幼子とは限りませんよ。ただ生まれてまだ間もない何かである事には変わりないですが」
チチチ、と鳴く鳥の声が遠のくと同時に、少し荒々しい足音が近付いて来た。襖のシルエットからその足音の主が骨喰と髭切であるということが窺える。
それにいち早く気づいた膝丸が、ちゃぶ台を潰しそうな勢いで叩きながら立ち上がり「兄者!」と叫んで襖を開けた。
二振りは神妙な面持ちで膝丸を見詰めているため、耐えきれず「いま飲み物を…」と歩き出す膝丸を引き止めた髭切が乱の行方を聞く。
「……………いや、見掛けてないな」
膝丸が首を振ると、残念そうに肩を落としていた。
「おやおや、行方知れずですか。そういえば今朝から鶯丸と一期一振を見ていませんね」 と宗三。
相変わらず気だるそうに頬杖をついている。
「いち兄も?俺は遠征だとばかり……」
「前田藤四郎の件もありましたしね…遠征だとしても主が帰さないわけが無い」
「では、その主は今どこにいるんだい?」
それでしたら、と徐に毛利が立ち上がり、髭切の腕を引っ張った。
「僕がご案内します」
その後ろを骨喰と膝丸がついて歩く。
そうして宗三だけとなったこの部屋に一つ、
細長い風が吹いていた。
「うわ、見事に誰もいないね」
警戒し乍、襖を少し開けて部屋を確認するも、中には誰もいないし誰かいた痕跡も見つからない。乱は一期と鶯丸に向け「寒いし、取り敢えず中に入ろう」と優しく微笑みかけた。
「主の部屋に誰もいないなんて可笑しいよね。あーあ、やっぱり此処、僕たちの本丸じゃないのかぁ」
「物の配置も内装も同じなのに不思議なものだね。さ、鶯丸殿、ここで作戦会議と致しますか」
未だに彼の手には黒い髪が巻き付くように蠢いている。
乱と一期が慎重に剥がそうと試みるも、鶯丸が痛そうに顔を歪めていてはこれ以上手出しは出来ない。
其れはまるで、鶯丸として生きているかのように凛々しく蠢いているのだった。
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作者名:ナナリナ | 作成日時:2019年5月10日 18時