続々々 ページ19
リン、リン―――
それは冬景色を背景に、嬉々揚々と踊り回っていた。季節外れの風鈴、ではなく、粘土で作られた土鈴だった。歌仙は真面目に見たことがなかったため、それを風鈴と思いやまなかったのだ。
風鈴、ではなく土鈴。
微風程度で鳴るものではないと、何故気付けなかったのか。しっかりと振らなければその音は聞こえない筈なのに。
最近風が強く吹くことはなかった。それなのに昼間までは風鈴とよく似た音でリンリンと鳴いていたのだ。
歌仙は理解した。
何事も見定めることが必要である、と。
そして、そしてもう一つ。
「歌仙は物に話しかけるから、僕も真似してあの鈴に話し掛けてみたらなんか好意を持たれたみたいでね。障子の外から毎晩、お慕い申しておりますって言われたよ」
何事にも限度があるということを。
「……明日は我が身ってやつだろう。僕も気を付けよう」
しかし、隣で聞いていた乱が「えー」と口を尖らせた。
「それは主さんの土鈴が思い込み激しかっただけで、歌仙さんの物たちはちゃあんと一線引いてると思うけどなあ」
「そうですよー。主さんの接し方が悪かっただけで歌仙さんは大丈夫ですって!!ね!」
続いて鯰尾が歌仙を宥めた。
「でも命拾いしたねえ、主も君たちも。薬研と僕が偶然通りかかったおかげで彼女との縁は薄いものになったんだから」
青江が今でも鳴り続ける土鈴を眺めながら、にっこりと微笑む。
これまでの悪行を許すかわりに、二度とうちの主と言葉を交わすな…その目はそう語っていた。
意味を汲んだ土鈴は粛々と身を縮めるように少しだけ静かになる。
「ま、良かったじゃねえか。被害なし!平和的に解決!よし!お開きだ!俺はもう寝るぜ。明日は早いからな」
薬研は立ち上がり、大欠伸をしながら審神者部屋を後にする。
それに続きそれぞれがゆっくりとした動作で立ち上がった。
しかし未だ微動だにしない刀が一振り。
「鶴丸。何をしてるんだい、寝ないと明日に響く」
無言のままただ一点だけを見詰めている。
歌仙がその視線を辿る。先にはやはりあの土鈴。
「ただ君を揶揄っているだけさ。見詰めるのはやめて早く床に就くんだ」
「でも、」
「あー!でも、なんて言い訳を僕が許した覚えないんだけどなあ」
乱がからかうように言うと、鶴丸は半泣きになって叫び出した。
「でも!!でもさぁ!!!あの土鈴!!!!!!いまも俺の声でリンリン鳴いているじゃないか!」
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作者名:ナナリナ | 作成日時:2019年5月10日 18時