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「蛇の道は蛇*膝丸」 ページ10

「兄者!」


廊下で髭切がふらふらと歩いているところを、膝丸は小走りで呼び止めながら駆け寄った。

「どうかしたの」と問い掛けられ、握り締めていた部隊作成の紙を慌てて広げると、そのまま相談を持ちかけた。



「夜戦ではないからな、まずは練度の低い者を優先するべきか………」



暫くして、あれ、と会話の最中に小さな疑問と違和感が生まれる。


それを確かめるべく、紙ばかりに落としていた目をすっと上げると、そこには自分の言葉を頷きながら聞いている主の姿があった。

「え」

驚いた膝丸は手に持っていた紙を足元に落としてしまった。

「あ、落ちちゃったね」と言いながら紙を拾おうとする主の肩を、膝丸は勢いよく掴む。



「あ、兄者は!?いつ入れ替わったのだ……!」



焦る膝丸に対し、主はぽかんとして首を傾げている。
だがそのうち何か察したような顔をして膝丸の頭を二回ほど撫でた。そこで自分の失態に漸く気付く。

「皆には、言わないでくれ……特に兄者には」

膝丸の顔も心も羞恥に染められていたが、同時に情けなくもなった。

いくら雰囲気が似ていようとも、霊力も何もかも違うというのに、
自分の兄と主を間違えてしまうなんて…







その日の膝丸はまさに憂鬱な気分で、近侍の仕事も手つかずのまま。


ぼうっと庭の外を眺めてはため息を吐く。その繰り返しだ。


それを見兼ねた歌仙は、彼の元へ温かい梅昆布茶をそっと差し出しすものの、受け取る気配はない。



「日向くんがね、これを飲むと元気になれると言っていたよ。」



素直に「元気を出して」と伝えた方がいいだろうと歌仙なりに考え出した言葉。だがそれも彼のため息によって流されていく。


せっかく僕が慰めているのに、と少し腹を立てながらも、その短気さを隠し言葉を続けた。



「良い天気だね………ああ、ほら見てごらんよ。花の上で蝶が羽ばたいて、まるで踊っているようだ」



歌仙が指をさした先を膝丸はじっと見詰めた。

やっと応えてくれた!と機嫌が良くなってそのまま詩を詠おうとした時。

仏頂面のまま低い声で「地獄から参った使者に似ているな」と膝丸が呟いた。



「ああ、そうかい」

持っていた湯呑みに、ぴきぴきと音を立てて亀裂が走る。



とうとう歌仙はどうしたら良いか分からなくなってしまった。

初期刀である歌仙にとって、古株で部隊も同じことが多い膝丸が落ち込む姿は初めてであり、

そんな彼に蔑ろにされるのも初めての事なのだから。

続*髭切→←続々



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設定タグ:刀剣乱舞 , 短編集 , ホラー   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:ナナリナ | 作成日時:2019年5月10日 18時

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