【刀剣乱舞】呑気に気ままに【審神者】 (ページ8)

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続ページ8

鯰尾の知っている甘味屋とは正反対の、前に主と一緒に観た映画に出てくる西洋風な内装で、

長いテーブルや椅子にはそれぞれ角に金の装飾が施されている。

席を案内する燕尾服というものを身に纏う男。

鯰尾は物珍しいもので溢れかえるこの場所に正直、戸惑った。

「綺麗なところ……ですね」

「でしょう？私のお気に入りの場所なんです」

いや…今のは主に言ったんだけどな、なんて苦笑しながら主の方を見上げると、目が合った。
やはり分かってくれていたようで、主は「そうだね」と頷く。

「では、ごゆっくり」

席に案内され、主の向かえに座る彼女の話はここでも止まらなかった。
聞いているこっちが飽き飽きする程の話題の量だ。

そんな彼女の隣に静かに座る江雪。
鯰尾も珍しく同じように大人しく主の隣に座っている。

そして異様なものを感じ始めたのは、彼女が刀剣の話題をしてからの事だった。

「刀剣にまつわるこんな噂があるんです」とまるで内緒話をする子供のように悪戯っぽく笑う。

ちょうどこの商店街に一振りの江雪左文字が現れるらしい。審神者を待っている様子でもなく、ただじっと立っているだけ。

「よく言う闇堕ちした刀剣ではなくて、審神者に仕えるごく普通の刀剣男士。でもでも、ここからが面白いんです」

その江雪、縁を切ってくれるらしいんです。人でも刀剣でも、なんでも。

え、と耳を疑う。
ただの噂話だとしても陰気な話だ。

主も苦虫を噛み潰したような顔をしている……のは、たぶん先程頼んだ珈琲がよほど苦かったからだろう。

鯰尾は、視線を流れるように自分の前に座る江雪に向けた。
彼は窓の外を見ていて、何ともない平然とした横顔が癪に障る。

同じ江雪左文字として、このような不快な噂が立っていることになんとも思わないのだろうか……

「それで、その江雪、縁を切りたい相手はいますか？って声をかけてくるらしいです。馬鹿馬鹿しいだとか嘘だろとか、そんな態度を取ると鞘から本体を取り出して、自身の腹に突き刺すそうで……」

流れ出た血を指で絡めとると、虚空を指でなぞり始める。

段々と赤い線のようなものがそこに浮かび上がり、それがまるで糸のようなのだという。

「誰との縁なのかは分からないまま、それを切られてしまった者は、魂が抜けた廃人のようになって生き続けるんです」

彼女が言い終えたその瞬間、

自分でも驚くほど力強く机を叩きながら立ち上がっていた。