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大倉さんのことを見上げて、そっと頬にふれる。

「今まで僕は、ただ欲のためにしかこういうことをしてこなかったんだなって知りました。」

「丸山さん…」

「体を合わせるって、こんなにも満たされることだったんですね。あなたにそう教えてもらいました。」

「…」

「大倉さん?」

「やばい。胸が痛い。うれしい。」

抱きしめる腕に力が入る。ぎゅうっとされるとまた心が満たされる。

「幸せやな…」

自然と出ていた言葉。大倉さんにぴったりと寄り添って、あまりの安心感に癒やされる。

「幸せ?」

「うん。」

「うれしい。いっつもニコニコしてるのに、どこか暗くて危なっかしい丸山さんのこと、ほんまに幸せにしたいって思ってた。俺が幸せにしたいって。」

「大倉さん…」

「人の幸せを心底喜べるのに、苦しんでる自分のことは全然無視してるんやもん。」

「そう…なんかな…」

自分のことを言われてもいまいちよくわからない。

「僕は…本当に怖がりで。誰でもそうだとは思うんですけど…。小さい頃から、人にきつく言われたり、きつく言われている人を見るのも耐えられなくて、耳を塞いだり逃げ出したりしていました。」

「繊細で優しい人です。丸山さんは。」

「自分の性に気づいて、戸惑って、焦って、闇雲に愛を求めていたのかもしれません。僕にだって普通の恋愛が出来るはずだって。今から思えば自分に酔って悲劇を装っていたのかも…」

「いや、その気持ちはわかります。」

そっと首もとに手をやる。大倉さんが包み込んでくれた場所。

「止せばいいのに何度も何度も失敗して。もう恋愛はしないって思って。」

首もとの手に大倉さんの手が重なる。

「でも寂しくて相手を求めてさまよって、たまに告白もされたけど、好きだの愛だの聞くと、恐ろしく気持ちが落ちて。ああ、僕は本当にもう恋愛はしたくないんだなって思ってました。ほんとに何年も。」

「しんどかったですね。」

「そうですね…今思うと、ほんとにしんどかったな…。ずっと意地を張って。思い返してもじゃあどうしたら良かったのかなんて思いつかないですけど…」

「それはそうですよ。みんな答えなんてわかりません。」

「親友がいるわけでもない。家族とは疎遠だったし、新しい家族を作ることも出来ない。僕の生きる意味って何なんだろうって、気が狂いそうで…。毎晩相手を探して、そうでもしないと眠ることが出来なかった。」

そっと大倉さんが抱きしめてくれる。

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orange(プロフ) - いつもありがとうございます。この場所があって、たくさん倉丸ちゃんに浸れるので、日々の活力になっています。また見に来てください! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 12b1e8c154 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - お疲れ様でした。いつも物凄く楽しみにしています、この二人のお話が少ないので強火の倉丸担オタクとしては最高に嬉しいです。次回作も楽しみに待ってます。 (2023年1月23日 8時) (レス) @page32 id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:orange | 作成日時:2023年1月7日 21時

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