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若い頃に戻ったみたいに心がはしゃぐ。電車の中は行きと同じ。満員電車にかこつけて、大倉さんの胸にぴったりと寄り添う。耳もとで囁きあって、クスクス笑って。
「どこに行くの?」
「夜景を観に行きましょう。たまに行くところがあるから。」
いつも通りの車内。でも今日は大倉さんが数十倍かっこよく見えて目が離せない。
「あのさ。照れるから。」
「あ。」
「やっぱり丸山さんは超絶かわいいな。想像どおり。」
「そ、想像?」
「ふふふ。そりゃあねぇ。」
「な、何を…」
「ほら、音楽でも聴きましょう。」
何回かドライブをしている中で、二人ともものすごく歌が好きなことがわかった。今も大きな声で歌って、大倉さんは下でハモり、僕も適当に上下でハモる。
「すげー!」
「いや、すげー!」
「デビューやな。」
「ふふ。大倉さんやったらすぐに売れるんちゃう?」
「…そんな甘い世界ちゃう。」
「真面目!急に真面目!!」
「(笑)!」
「ちなみに僕、ちょっとベースやってた。」
「え!俺、ドラムやってたで!まさかのリズム隊!?デビューやん!!」
「そんな甘い世界ちゃう。」
「(笑)」
車がほとんど通らない山道。本当にこんなところに夜景スポットなんてあるのか不安になったけど、目的地につくと結構な車がいる。
「穴場とまでは言えないですけど、きれいですよ。行きましょう。」
そっと手が差し出される。うれしくなって手を重ねて、ぴったりとくっついて歩き出す。
「わ〜!めっちゃきれい!!」
目の前に広がる光の海。
「僕、生まれて初めてこんなん見た!」
「ほんま?」
「うん。運転出来ひんし。一緒に行く人もいなかったし。すごいなぁ!なんか現実を忘れる。」
「よかった。丸山さんの初めてを俺が演出できた。」
後ろから抱きしめられて、背中がほかほかとあったまる。
しばらく無言で景色を眺めて、二人でいるからこんなに澄んだ景色に見えるんだろうななんて思いながら大倉さんを振り返る。
「もうちょい、こっち。」
ん?と思いながら大倉さんを追いかけると、そっと唇が重なる。驚くほど心地がいい…あ…離れてしまう…
「もっかい…」
そんな言葉を呟いてしまう。嬉しそうに微笑んだ大倉さんが、もう一度優しく唇にふれた。
「丸山さん。帰ろ。一緒に。」
見つめ合って言われた言葉に頷く。もう一度手を繋いで乗り込んだ車の中。体がウズウズとしてたまらなくなる。
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orange(プロフ) - いつもありがとうございます。この場所があって、たくさん倉丸ちゃんに浸れるので、日々の活力になっています。また見に来てください! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 12b1e8c154 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - お疲れ様でした。いつも物凄く楽しみにしています、この二人のお話が少ないので強火の倉丸担オタクとしては最高に嬉しいです。次回作も楽しみに待ってます。 (2023年1月23日 8時) (レス) @page32 id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:orange | 作成日時:2023年1月7日 21時