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「丸山さん…」
大倉さんの声が恐ろしく近い。
「好きです。」
抱きしめてくれている腕に少し力が入る。
「あなたと出会ってから、ずっとこの気持ちを押さえることが出来ない。」
え…?なに…これ…。何がどうなってんの…?
「あ…の、えと…」
何とか声は出したものの、混乱して何を言えばいいのかわからない。
戸惑っていると、腕の力が少しゆるむ。自然と顔をあげると、そこには真剣で、不安そうな瞳があった。何か答えないと…でも…
「す、好き…?」
「はい。あなたのこと、ずっと好きなんです。」
「それは、その…友人というのか…」
「いえ。恋人の好きです。」
真剣に答えてくれる大倉さん。でも、それにどう答えたらいいのか全くわからない。
「僕は…恋愛はもう…」
その言葉に、大倉さんは切なそうな顔をして答えてくれる。
「ゆっくりでいいんです。俺が丸山さんに悲しい想いなんてさせませんから。」
「大倉さん…」
もう一度抱きしめられる。
「俺が一番に立候補しました。真剣にあなたのことを愛しています。だから、恋愛はもうしないというなら、俺以外の誰ともしないで。他の誰のものにもならないでほしい。」
少しずつ大倉さんのぬくもりが自分の体に伝わってくる。居心地の良さに包み込まれそうになって、ふと気づく。いや、待って。
「大倉さん、結婚されるんじゃ…?」
そうやん!この人何を言ってるんや。
「…え、結婚?」
何をとぼけて…
「はい。結婚するんですよね?」
少し強めに訴えても、キョトンとした顔のまま。全く身に覚えのないように尋ねてくる。
「俺が?」
「はい。」
「それは…誰から聞いたんですか?」
「えと…企画部の…」
「企画部の誰?」
「ん〜…誰かはわからないけど、相手は得意先の娘さんって…」
「得意先?どこ?」
「いえ、…知りません。」
少し考えるような素振りのあと…
「告白したから言いますけど、俺は女性は愛せません。」
思考が止まる。え?
「いわゆる普通の結婚とは縁がなくて。」
驚いて固まっている僕に、大倉さんがゆっくりと話しはじめる。
「丸山さんのこと、展示会で初めて話した時からすごく気になっていました。」
あの時から…?ほんとに少し言葉を交わしただけなのに…
「その時は一瞬だったし、すぐに忘れるって思ってて。でも、ヤスの教室にやってくるし、転職先の会社にはいてるし、もう運命としか思えなかった。」
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orange(プロフ) - いつもありがとうございます。この場所があって、たくさん倉丸ちゃんに浸れるので、日々の活力になっています。また見に来てください! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 12b1e8c154 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - お疲れ様でした。いつも物凄く楽しみにしています、この二人のお話が少ないので強火の倉丸担オタクとしては最高に嬉しいです。次回作も楽しみに待ってます。 (2023年1月23日 8時) (レス) @page32 id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:orange | 作成日時:2023年1月7日 21時