群青の星 (ページ43)

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「ｳｳｯ…大倉さん…ごめんなさい…」

大倉さんの胸にすがる。こんなことしたらあかんのに。誰かに甘えたらまた…

でも、ふんわりと包んでくれる腕が心地よくて、あったかくて。ただそれがうれしくて涙が止まらなかった。

「座ろうか？」

ようやく涙が落ち着いた頃、大倉さんがベンチにうながしてくれる。

「ごめんなさい。服がぐちゃぐちゃ…クリーニングして返します。」

「ええよ。気にせんと。」

「…すみません。」

それから本当に何も聞かず、ただ隣に居てくれる大倉さん。苦しいとき、こんな風に寄り添ってもらったことなんてなかった。

「僕、仕事に戻ります。」

「今から？」

「はい。」

「じゃあ、俺も。」

「え、今から？」

「はい。」

「…その、抱きついてすみませんでした。ごつい男と抱き合ってたなんて、噂にでもなったら申し訳ないです。」

「そんなん、俺もそんな時あったやんか。」

「あ…でも…こんな公園で…」

「丸山さん。俺は何とも思ってないから。ただ丸山さんが心配なだけです。丸山さんが安心できたのなら、それでいいんです。」

「…ありがとう。」

「ん。ええよ。」

心強いな。人がいてくれるって、こんなにも心強いもんなんや。そんなこと全然知らんかった…

「行きましょうか。」

「はい。あ、用事って…？」

「実はうちの企画の…」

本当にいつも通り。さっきのことなんかなかったみたい。そこからしばらく仕事をして、大倉さんは家まで送ってくれた。

「僕、大倉さんに助けてもらってばっかりですね。」

「俺も助けてもらってますよ。」

「なんか情けない。男やのに、またやり返せなかった。」

「丸山さん、優しいから。」

「優柔不断なだけです。本当にありがとうございました。」

「いいえ。しばらく送り迎えしますね。車で出勤します。」

「それは駄目ですよ。大丈夫です。大倉さんに勇気をもらったので、もうこんなことにはなりませんから。」

「でも、危険なことないんですか？俺はまた警察に行ったほうがいいと思ってるんですけど。」

「大丈夫。あの人、その、前の同僚で、あの、ちょっと揉めて…。家族もいるし、そんな無茶はしないと思います。」

「…では、困ったときは必ず連絡をください。これは約束ですよ。」

「はい。」

「それと、焼き上がった作品。今度見に行きましょう。これも約束。」

笑顔でそう言ってくれる大倉さん。心の中はまだぐちゃぐちゃだけど、うれしい約束に大きく頷いた。