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「でもほんと、この会社に丸山さんがいたときは運命を感じましたよ。」
「ふふ。あの資料室の背中、忘れられない。でも、大倉さんがあちこちから狙われている優秀な人だとは知らなかったな。」
「はは。そこまででは。」
「なんでうちを選んだんですか?」
「なんでやろう。正直何でも良かったんですけど…」
「な、何でも良かったって…」
「前の会社でなんかもうやることないなぁって悩んでて。」
「やることがない?」
「ん〜、やりたいことやって後に引き継げたなってタイミングだったんですよ。それと…」
「それと?」
「あ〜…はは。」
「は?」
「その、ちょっと女性問題で色々と…」
「女性問題?」
「泥沼でした。」
「へ〜…なんか意外と大倉さんて…」
「あ!俺は何にも関わってませんよ!知らないところで知らない人たちが揉めて、そこに巻き込まれてしまって。」
「何と言うか、人気がありすぎても大変なんですね。」
「いや、なかなか難しいですね。」
「ふふ。モテる人の悩みはなかなか相談できませんよね。どうしても嫌味になるし。」
「まあ…そうなんですよね。だから出ることが最善だなと思って。いくつか候補があったんですけど、声をかけてもらって一度見学に来たときに、ここかなぁって思ったんですよね。」
「直感?」
「ん。大当たり。」
「ふふ。それはよかった。」
「丸山さんと出会えたから大当たり。」
「は?そういうのさらっと言うから泥沼化するんちゃいます?」
「あ〜、でもほんまですから。」
「いや、だから…」
そういうことは本命の女性だけに言うべきなんじゃ…。でも何でか満足そうに微笑んでいる姿を見ると、何とも言えなくなる。
「丸山さんの営業は天職ですね。」
「そうなのかな…」
「丸山さんと話してて嫌になる人いませんもん。」
「それは大倉さんも。」
「俺は結構言いますよ。もちろん人は見ますけど。丸山さんは果てしなく優しいから、営業先にもそれが伝わるんでしょうね。真面目なプレゼンもとても好感がもてる。」
「でもどんくさいからめっちゃ時間かかります。失敗もめちゃくちゃするし。」
「でも本番にはきちんと合わせてくる。すごいですよ。真面目。」
「…そんなに褒めてもらえたら、また頑張れそう。」
「ふふ。頑張ってもらわないと困ります。三課の企画、またお願いしたいし。」
「営業しがいがあります。大倉さんてほんとにアイデアマンですよね。」
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時