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「ほんでやなぁ、お前が帰ったあとにヨコがなぁ…」
「いや、だから聞きましたよ、その話。」
「なんやねん！なんぼ聞いても幸せになるやろ！」
「あ〜まぁ。」
村上さんが晴れて横山さんと付き合うようになったのは、あの風邪で寝込んだ日から。結局２日間休んだ村上さんは、次の日、珍しくしおらしい雰囲気で僕に報告してくれた。でもそこから…
「マル！ヨコがなぁ…」
毎日毎日、僕は最早横山さんのことで知らないことはないんじゃないかと言うくらい、横山さんのことを聞かされた。
「だからか！？」
「へ？」
「だからあの親睦会であんなことになったんやな。」
「あんなこと？」
「はあ！？ほんまに。人の彼氏捕まえてキッスしようとするなんて、お前じゃなかったらもう一生口聞いてへんところや！」
「え、キ、キッス？僕が？」
「…は？」
「何も覚えてない。」
「お前…やばいな。」
「全然覚えてない。」
「気をつけろよ。お前、記憶がないうちに知らんやつとキッスしてることあるんちゃうか。」
そもそもこんなに人前で飲みすぎることが珍しいけど、そんなことしてたなんて考えたら恐ろしい。
「怖…」
「ほんまに怖いわ！あかんぞ、お前。気心知れたやつとおるときだけにしろ。」
「ん。そうします。…それよりさっきからキッスって言い方気になるんやけど。何で小さい「ッ」を入れるんですか？キスでしょ。」
「はあ？そんなもん…何か恥ずかしいやんけ。」
わからん！やっぱり村上さんて変わってる。でもきっと、このピュアな感じ、横山さんは大好きなんやろうなって思う。
「今度は３人で飲みに行きましょう。」
「ええけど、ヨコの隣は俺やしな。」
「ふふ。はーい。」
◇
「先週の親睦会ではすみませんでした。」
「いいえ。こうやって晩飯に来れたし、気にしないでください。」
「あの、これ、荷物になると思ったんですけど…」
大倉さんが選んでくれたのは、個室のあるお洒落な小料理屋。お詫びに選んだ品物も渡して、やっと落ち着いて料理に向かう。
「うまあ！」
「そうでしょ？俺、結構ここ、通ってるんです。」
大きな口で豪快に食べる大倉さん。貴公子のような容貌から想像できないわんぱくな感じは、とても好感がもてる。
「こうやってゆっくり話すの久しぶりですね。」
「いつも意味のない話はずっとしてますけどね。」
「(笑)！確かに。」
「それで時間が終わってしまうから、こんな雰囲気は確かに久しぶりですね。」
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作者名：orange | 作成日時：2022年12月27日 14時
