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「そんな、僕なんか全然。村上さんは本当にすごいですけど。」
「あいつは走り出したら止まらんから。俺もあいつに引っ張られることよくありますよ。」
隣の部屋を優しいまなざしで見る横山さん。村上さんの片思いってこの人やな。いや、ほんまに片思いか?
「村上からなんか聞いてます?」
「なんかとは…?」
「いや。あ〜…。俺、村上とは学生の時からの知り合いで、結構長いんですよ。」
「そうなんですか。なんかお互いよく知っておられそうだったし、やり取りが夫婦みたいやから、昔からの付き合いなのかなぁとは思いましたけど。」
「ふ、夫婦…」
「あ、何と言うか、その、分かり合ってるというか、あ!親友か。」
しまった。普通は親友や。…でも夫婦にしか見えへんかったもんな。
「まあ、そうですね。二人で助け合って生きてきたようなとこあります。」
「いいですね、そういう存在があって。」
「丸山さんも、村上にとってそんな存在になりつつあるんちゃうかな。買い物まで頼むなんて、そんなやつ初めて見ました。」
「そうなんですか?」
「あいつ面倒見が良いけど、滅多に深入りせーへんし。意外と寂しがり屋やから、できたらちょくちょく構ってやってください。」
「それはもちろん。村上さんのおかげで、本当に僕、前向きになれそうなんで。」
「そうですか。」
「はい。あの、横山さんも、またよろしくお願いします。じゃあ僕はこれで。」
「あ、すんませんね、わざわざ。」
玄関まで見送ってくれた横山さんは、丁寧にあいさつをしてくれた。
あんなにムキになるなんて。村上さん、愛されてるわ。
自分のことではないのに無性にうれしい。今度出てきたら、なんて言って二人のことを聞き出そうかとワクワクしながらマンションを後にした。
◇
「丸山くん。相変わらず調子がいいね。」
営業一課の田西課長。できるだけ会わないように避けてきたのに、タイミング悪く捕まってしまった。
「今日はどこへ?」
肩に触れる手。その手が背中に周り、別の手が腕をさする。
「あの…今日は…」
気持ち悪い。なんか前よりも気持ち悪く感じる。そうか、あの公園でのことがあったから…
「その後は空いているかい?いい加減わたしに付き合ってくれよ。」
クラクラしてきた。あかん。毅然と対応しないと。
「田西課長。」
「あ?あ〜大倉か。」
「丸山さん?」
そこには資料を抱えた大倉さんの姿。思わず泣きそうになる。
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時